笠 議員の代表質問と答弁

◯47番(笠 康雄)登壇 おはようございます。私はみらい福岡市議団を代表して、平成24年度予算案並びに諸議案に対し、質問と提案をしてまいります。細かいことにつきましては、補足質疑や総会質疑で我が会派の議員が質問をしてまいりますので、代表質問では大局的な見地から何点かだけを質問いたします。私たちみらい福岡市議団の提案と質問に対しまして、市長の明快な答弁を期待するものであります。
 本市はこれまで、自由闊達で人輝く自治都市・福岡を目指して、新時代のまちづくりに勇気を持って挑戦し、アジアに開かれた魅力あふれるまちとして成長を続け、内外から一定の評価をいただいてまいりました。しかしながら、時代は大きく転換しており、このまま安穏としていれば、元気都市と言われたこの福岡市でさえ、大きな時代のうねりに飲み込まれ、市長が掲げておられる暮らしの質の向上や都市の成長という理念や理想も絵そらごとに終わってしまうのではないかと私は危機感すら覚えます。それほど、我が国や地方を取り巻く環境が厳しいということを我々は認識すべきであります。
 現在、平成24年度政府予算案が国会において審議されています。政府は、この予算のポイントとして、日本経済の再生のために日本再生重点化措置として予算の重点配分を行ったことや、中期財政フレームに基づき歳出の大枠を堅持した事柄を掲げ、あたかも立派な予算案をつくられたかのようにおっしゃっています。しかし、その実態はどうでしょうか。平成24年度の一般会計予算規模は90兆円と確かに23年度を2兆円下回り、歳出の大枠も堅持されているかのように見えます。しかしながら、これは基礎年金の財源として必要な額2兆6,000億円を交付国債で穴埋めし、現在負担すべきものを将来につけかえたことによるもので、これで大枠を堅持したなどと言われても全く評価できるものではありません。また、東日本大震災の復旧、復興に対するための予算は、別途、特別会計を設け、一般会計から切り離したにもかかわらず、依然として赤字国債は増加の一途をたどっています。
 平成24年度予算案においても、国の公債金、つまり新たな借金は44兆円と税収の42兆円を超え、借金が税収を超える異常事態が3年連続で続いています。その結果、国と地方の長期債務残高は平成24年度末には937兆円、GDP比で2倍近くに達する見込みであり、先進国で最悪の数字となっています。こういった状況から、昨年8月のアメリカ格付会社に引き続き、12月には国内格付会社が日本国債の格付を引き下げました。それほど市場は厳しい目で見ているのです。現時点では低金利による資金調達が可能ではありますが、一たん信用が失われれば、ギリシャのように金利が急上昇し、国家財政が破綻するのは火を見るよりも明らかです。
 一方で政策面を見ますと、マニフェストの象徴であった子ども手当の月額2万6,000円の支給や高速道路の無料化、八ッ場ダムの中止、そして、増税は無駄の削減や埋蔵金の発掘により行わないなどとした公約はことごとく崩壊しているありさまです。特に社会保障と税の一体改革では、増税の話ばかりが先行しており、給付の抑制といった国民受けの悪い話、例えば、70歳から74歳の医療窓口負担を2割に戻すことや、外来患者の窓口負担100円の上乗せ、年金受給開始年齢の引き上げなどといったものは総じて先送り、あるいは断念されています。また、ここに来て、最低保障年金を導入した場合のシミュレーションについて報道がなされましたが、消費税の10%への引き上げでは財源が不足し、さらに7.1%もの上乗せが必要とのことです。
 そもそも現在の社会保障制度は、戦後から昭和30年代にかけ、人口増加と経済の右肩上がりを前提として制度設計がなされてきました。その後、少子・高齢社会の到来やデフレの長期化といった社会構造の変化にあわせて、継ぎはぎでしのいできましたが、もはや小手先の見直しでは制度を持続できないことはだれもが知っています。また、日本は既に人口減少社会に突入しており、厚生労働省が1月30日に示した将来人口推計では、平成22年の1億2,806万人が50年後には8,674万人へと4,000万人以上も減少する見通しであり、当然、労働人口も大幅に減少していきます。
 社会保障制度の中でも、特に年金、医療、介護といった社会保険については、国民からの保険料を根幹として運営がなされているのに、こういった現実を前提にどれ一つ構築されていません。安心と信頼がなければ制度の維持すら困難なのです。良識ある国民は、負担すべきものは負担するのです。しかしながら、将来の明確なビジョンが示されなければ、国民はどこまで負担させられるのかといった不安感を抱かざるを得ません。多くの国民は、ばらまきに期待しているのではなく、将来の負担と給付をわかりやすく明確に示し、持続可能な制度への抜本的な改革を期待しているのです。
 また、社会資本整備に当たっても、今回、八ッ場ダムの中止が撤回されました。私はこのダムの必要性云々を語るつもりはありませんが、公共事業見直しの象徴であったこの八ッ場ダムの中止撤回で従来型の公共事業が繰り返されるのではないかと多くの国民が危惧しています。
 公共事業については、高度成長期ならいざ知らず、これまでのような護送船団方式による日本全国横並びの資本投資はもうやめるべきであります。日本という狭い国土の至るところに空港や港湾といった巨大な資本が形成され、その維持更新に巨額の経費が費やされています。もはやそのような時代ではありませんし、これ以上、赤字借金をふやすことは許されません。
 今後の経済財政の見通しはどうでしょうか。内閣府が1月24日に示した経済財政の中長期試算によると、今後の実質経済成長率は成長戦略シナリオで年平均1.9%、慎重シナリオでも年平均1.2%の成長が見込まれています。特筆すべきは、社会保障と税の一体改革案どおりに消費税を平成26年度及び27年度に段階的に引き上げたとしても、いずれのシナリオにおいても成長率は年平均で0.1ポイントのマイナスにしか影響しないということです。
 平成元年度に初めて消費税が導入されたとき、日本経済が回復・上昇期であったにもかかわらず、成長率は前年度と比べ1.8ポイント低下しました。次の平成9年度に消費税を引き上げたとき、このときはアジア通貨危機も重なり、成長率は2.7ポイントも低下し、ゼロ成長に陥っています。消費税の引き上げが今後どうなるのか、政権与党内でも意見の食い違いが報道されており、一枚岩ではないようですが、いずれにしても消費税の引き上げだけで国家財政が好転するとは到底思えません。
 さらに、経済活動のグローバル化が一層進んだ現代社会においては、リーマンショックや欧州の政府債務危機、タイの洪水など世界経済の変動は日本の社会経済にもダイレクトに影響し、株価の下落や急激な円高、産業の空洞化などといった形で顕在化してきます。悲観的になるつもりはありませんが、世界のどこかで危機が起これば日本経済にも何らかの形で悪影響を及ぼす、これは紛れもない事実なのです。
 このように、国家財政の極めて厳しい現状や今後の見通しを踏まえると、国が行うべきは、まさに財政再建への取り組みであります。徹底した無駄の排除と投資の重点化を図り、スリムな政府を実現することにより、国家財政の再建を早急に行っていくべきだと考えますが、今の政権を見ている限りにおいては全く期待できません。私は昨年の9月議会でも申し上げましたが、もはや政治の劣化と言わざるを得ないありさまです。
 ここで福岡市の状況に目を転じたいと思います。
 本市においては、国に先駆け、職員数の削減や給与カット、市債発行額の抑制や市債残高の縮減など行財政改革に積極的に取り組んできたものと認識しており、一定の評価はするものであります。平成16年度末のピーク時には2兆7,000億円にも上った市債残高は、この間、着実に縮減され、2兆5,000億円を切るとともに、地方財政の健全性を示す実質公債費比率も年々改善しています。また、職員数についても、平成17年度の1万625人から、この7年間で1,000人を超える削減がなされ、市民1万人当たりに対する職員数は政令市の中でも最少を堅持しています。
 こうした財政健全化の取り組みは高島市長就任以降も踏襲され、平成24年度予算においても、地方交付税の代替措置である臨時財政対策が引き続き増加する中で、市債残高が着実に縮減されるとともに、職員数も削減されたことは、我々会派の主張と一致するところであります。しかしながら、現在の取り組みで満足されては困ります。一定の成果を上げているとはいえ、市民1人当たりの市債残高は大阪市に次いで多く、執行体制についても、現業部門や外郭団体など見直すべき課題は依然として多く残っています。
 現在、政令市の中で最も市債残高を多く抱える大阪市では、先般、橋下市長が就任されましたが、早速、市営地下鉄やバスの民営化、水道事業を大阪広域水道企業団に統合などを打ち出されております。そう簡単にできるものではありませんが、実現されていけば、大阪市の市債残高は劇的に減少し、本市が市債残高ワーストワンになる可能性も決して否定できないのです。こうした抜本的な改革案は、トップダウンで外に向かって打ち出すという橋下流のやり方も一つの参考とすべきではないでしょうか。
 また、地方経済は依然として低迷し、市税収入が伸び悩む中、本市においても借金の返済である公債費は依然として1,000億円を超えており、高齢化の進行と雇用の悪化と相まって、社会保障関係費も引き続き伸び続けています。市債残高については、着実に縮減してきているものの、一たび金利が上昇傾向となれば、国と同様に本市経済は極めて深刻な状態になるでしょう。
 金利上昇は、固定金利で借り入れているものは別として、新たに発行する市債や借換債にかかわる金利負担の増大を招きます。平成22年度決算を前提とした大まかな試算ではありますが、仮に1%金利が上昇すれば、今後、年平均で20億円程度負担が増加するとのことです。実際、日本国債が暴落すれば、とても1%の上昇では済まないでしょう。これは現実に起こり得る話なのです。
 社会保障関係費については、特に生活保護を例に挙げると、20年前の平成4年度が300億円、10年前の平成14年度でも440億円であったものが、平成24年度の予算では780億円を超え、この10年で2倍に達しようかという勢いです。これほどの著しい伸びが今後も続くことはないでしょうが、本市においても高齢化は着実に進行しており、社会保障関係費は確実に増加していくことは明らかです。
 また、雇用状況については、リーマンショック直後の急激な悪化から幾分改善はしてきていますが、昨年12月時点における福岡県内の有効求人倍率は0.64倍と、全国平均の0.71倍より低い水準となっています。特に若者の就職は深刻な状況にあり、昨年末における福岡県下の大学等卒業者の就職内定率は51.4%、前年同時期と比較しても0.4ポイントのマイナスとなっており、極めて厳しい状況が続いています。
 さらに、本市においては、過去に整備した社会資本の大量更新期が間近に迫ってきています。少年科学文化会館や中央児童会館、市民会館、拠点体育館、新青果市場やこども病院、舞鶴や住吉校区を初めとする学校施設、さらには市営住宅と枚挙にいとまがありません。細かい事業費の積み上げまでは承知していませんが、毎年、数百億規模の新たな投資が必要になってくるのではないでしょうか。本市経済を立て直し、安心、安全で質の高い暮らしを実現していくとともに、必要な社会資本の整備を行っていくためには多額の財源が必要となってきます。厳しい財政状況の中、そうした財源を新たに生み出していくことは極めて困難ですが、果敢に立ち向かっていかねばなりません。国からの地方交付税や補助金は、これまでるる述べてきたように、国家財政はいつ破綻してもおかしくない状況にあり、当てにはできません。国に頼らず、福岡市がしっかりと生き残っていくためには、一層の行財政改革を推し進めていかなくてはなりません。
 毎年多額の収入未済が生じる市税収入や保険料、使用料などの収入率をこれまで以上に向上させるとともに、広告料収入や未利用地の売却など、さまざまな視点や工夫によって財源を確保すべきです。また、歳出についても、選択と集中によって無駄を徹底的に省いていかねばなりません。我が会派がこれまでも主張してきたとおり、民間の活用による現業部門等の削減を一層推し進めるとともに、外郭団体の根本的な見直しや漫然と出し続けている補助金の見直し、さらには職員給与のあり方も含めて行財政改革に取り組む必要があります。社会保障関係費も聖域ではありません。
 市長は国民健康保険料の引き下げを公約に掲げ、平成23年度予算において2,000円の引き下げを実施されました。しかしながら、この引き下げは中間所得者の負担軽減のための賦課割合の見直しに伴って、負担感が増す低所得者に配慮して特別に実施したものだったはずです。国民健康保険特別会計に対しては、これまでも国が定めたルール以外に一般会計から多額の繰り出しを行っています。今回、国保運営協議会に当初提案された年額391円の引き上げは、負担と給付の関係やほかの保険加入者との公平性から見ても適当であり、幾ら公約事項とはいえ、見直しすべきところは見直しをしていくという市長の姿勢を評価しておりましたので、最後まで貫くべきだったのではないでしょうか。保険料引き下げという公約に固執する余り、財政規律を守るというもう一つの方針を見失われたとすれば、本当に残念でなりません。たとえ社会保障関係費であっても、生活保護の適正化や本市が単独で実施している補助金の見直しなど、可能な限りその抑制を図っていく必要があります。また、今後の社会資本の整備についても、明確な優先順位づけのもとで事業費の圧縮や平準化を図るとともに、民間資金を最大限に活用するなど選択と集中を徹底していかなくてはなりません。そして、戦略的な観光、集客などによって都市の成長を目指す、稼げる都市という市長の発想は共感するものであり、我々も一緒になって取り組んでいきたいと思っています。
 今、市長には行政規律を保ちつつ、暮らしの質の向上と都市の成長を実現していくという極めて重要かつ困難な市政運営のかじ取りが求められており、市長が本領を発揮するのはまさにこれからであります。より強力なリーダーシップを発揮し、未来への夢と希望が持てる将来像を具体的に示していただきたいと思います。
 今まで、国や本市の待ったなしの厳しい財政状況についてるる述べてまいりました。こういった財政状況だからこそ、本当に危機感を持って見直すべきところは大胆に見直し、本市の成長戦略のために投資すべきところには将来を見据えてしっかりと投資を行う、まさに選択と集中をしっかりと行っていかなくてはなりません。
 国においては、国家公務員総人件費の2割削減、非効率的な事業運営が問題化している独立行政法人の再編、官僚OBの天下りなどが指摘されている公益法人への支出見直しなどが盛り込まれている行政構造改革実行法案を国会に提出すると報道されております。また、その基本理念には豊かな公と小さな官を提唱し、公共的な事業に関し民間が担う範囲を拡大し、役所が担う分野をできる限り小さくしていくことが掲げられているようです。
 そこで、本市においても、こういった厳しい社会情勢の中で真っ先に取り組まなくてはならない行財政改革の推進について幾つかお尋ねしていきます。
 まず、財政の健全化についてですが、本市の市債残高は毎年縮減されてきておりますが、平成24年度末見込みで2兆4,757億円、これを市民1人当たりに換算すると、約171万円の借金となっており、平成22年度末時点では政令市の中で大阪市に次ぐ高い水準となっています。私は、先行投資として子孫に社会資本とそれに見合う債務は残してよいものの、かつてのような右肩上がりの経済状況は期待できないことから、市債残高は適切な水準に是正すべきと考えます。今後、政令市施行前後に建設された学校などの公共施設の更新や、経済対策、雇用対策なども考慮していかねばなりません。このような状況を踏まえると、施策の選択と集中を徹底し、これまで聖域とされてきた分野の事業についても思い切った見直しを図っていくなど、一層、財政健全化の取り組みを進める必要があると考えますが、今後どのような取り組みを進めていかれるのか、御所見をお伺いします。
 次に、職員定数の削減についてですが、本市では現在、職員の大量退職期を迎えているところであり、この機をとらえ、強力に行政改革を進めることによって職員削減を図っていくことが必要であります。しかし、職員削減を進めていく中で、各部署を一律に削減していくのではなく、本市の長期的な将来構想を踏まえ、必要な部署には適正に職員を配置しながら、縮小すべきところは厳しく見直しを行うなど、濃淡をつけて取り組んでいく必要があります。
 市長も、民間が担うことができるものは民間にゆだねるという考え方に立ち、効率的な市役所の実現に努めると言われてあります。我が会派としても、民間にできることは民間に任せるという考え方に立ち、既に民間市場が充実し、委託することによって市民に影響を及ぼすことがないような守衛業務や自動車運転業務、調理業務などについては、積極的に民間委託などを推し進め、総人件費の削減に取り組むべきであると考えます。また、これを推し進めることによって民間の雇用拡大や企業収益になり、市税の増収につながるなど、その効果は非常に大きいものであると考えますが、御所見をお伺いします。
 次に、外郭団体等の根本的見直しについてですが、今後さらなる事務事業の見直しや効率化が求められているところでありますが、このことは市役所だけではなく、外郭団体についても事業そのものの必要性や団体の存在意義について検証を行うとともに、人員や運営コストの削減、団体の統廃合をより強力に進めていく必要があります。また、外郭団体については、民間並みの経営感覚を身につけ、みずから積極的な改善、改革に取り組み、より効率的な経営に努めなくてはなりません。
 本市では、平成20年度に策定された第2次外郭団体改革実行計画に基づき外郭団体の見直しが行われておりますが、民間の感覚からすると、もっと全体的にスピード感を持って対応していかなくてはなりません。
 大阪の橋下市長は、マニフェストで外郭団体は天下りの温床となっており、民間で行うことができる事業について民間で行うべきであることから、外郭団体については廃止、民営化、広域化等により全廃するとまで言われています。
 そこで、本市においても、平成22年度及び23年度の2カ年で監査法人による経営評価が実施され、外郭団体経営評価報告書が提出されていますので、これを有効に活用して外郭団体の事業や財務内容の点検、評価を行い、さらに見直しを加速していく必要があると考えますが、今後の見直しについてどのように考えておられるのか、御所見をお伺いします。
 次に、本市の成長戦略のために投資すべきところには、将来を見据えてしっかりと投資を行うという観点から幾つかお尋ねをしていきます。
 まず、観光、集客についてお尋ねします。現在、福岡を訪れる観光客の多くは、ショッピングを初めとする都市型観光を目的としており、天神はもとより、JR博多シティや第2キャナルの開業が続く博多部とあわせて、一見活気づいているように見えます。しかし、九州新幹線の全線開通により歴史的な観光名所を持つ熊本や鹿児島が近くなったことなどを考えると、ショッピングに偏重した感のある本市の現状では、継続的に人を引きつけることができないのではないかと危機感を持っているところであります。今後の福岡の活力を生み出すためには、やはり観光という視点は欠かせません。福岡ならではの魅力をつくり、他都市との差別化を図ることにより、人を引きつける施策を進めるべきであると考えます。その際、新たに施設を整備するのではなく、古きよき建造物や文化財などを守り、活用する。実際の活用に当たっては、行政や企業だけではなく市民もかかわり参加する。それを文化の振興、そして観光の振興に役立てるという発想を持つべきだと考えます。
 残念ながら、福岡市は太平洋戦争の大空襲により多くの古い建造物を失い、戦前のものはごくわずかしか残っていません。比較的古い建造物も、市民や観光客に開かれた魅力ある施設は少ないと言ってよいのではないでしょうか。神戸市や横浜市には、古い銀行の建造物を博物館として再利用し、古いまち並みを守りつつ、市民や観光客の集客拠点になっている神戸市立博物館や神奈川県立歴史博物館という施設があります。長い歴史を経て、まちの顔にもなっているこれらの建造物がその文化的価値を保ちながら、中身は新しい文化施設として生まれ変わっているのです。
 福岡市においても、例えば、日本銀行福岡支店はルネッサンス建築を根幹として設計され、日本銀行の支店としては戦後初めての鉄筋コンクリートづくりで、昭和26年に建てられたすぐれた建造物ですが、天神の一等地にありながら、市民のほとんどの方は入れない閉鎖的な施設です。
 そこで提案ですが、もし可能であるならば、この建造物を買い取り、博物館や美術館のような文化施設に改修し、価値ある文化遺産として市民や観光客に開放してはいかがでしょうか。近くには、福岡市赤煉瓦文化館や旧福岡県公会堂貴賓館などの歴史的建造物もありますので、これらをあわせて文化という要素を新たに天神に加えることによって、古きよき福岡市のまち並みを回遊体験するゾーンが生まれると思います。さらに、2階建てオープントップバスや那珂川水上バスとの連携により、観光資源としてさらに魅力が向上すると思います。
 また、近年、中国発クルーズ客船の寄港が増加し、中国人の本市への入国者数は平成18年の約4万7,000人から平成22年には11万5,000人へと約7万人も伸びてきております。しかし、クルーズ客船の観光客は福岡の滞在期間が短く、福岡での目的がショッピングに集中していることもあり、天神の一部の商業施設への立ち寄りに限定された状況にあります。このことは、さらなる観光客の増加や再来訪につなげるための貴重な機会を喪失していると言えます。福岡のことをもっと知っていただき、また来たいと思っていただけるようなものをつくっていく必要があると考えております。
 私は、海外を訪れる際には、その国らしい場所や日本との歴史を物語るような場所に行き、その歴史を肌で感じることが楽しみの一つとなっておりますが、福岡を訪れた外国人観光客もそのような思いを持っているのではないでしょうか。それにこたえられるものを果たして福岡市は提供しているのでしょうか。特に中国からの来訪者が増加していることを考えた場合、元寇防塁などはその対象となり得ると考えておりますが、今津や生の松原などでその一部が発掘、復元されているものの、その規模が小さく、また、点在していることやアクセスの不便さも含めて、観光客が楽しめ、行きたいと考える場所にはなっていないのが実情です。
 元寇防塁は、元の日本侵攻を阻んだ石積みの防御壁であります。1274年の文永の役では元軍の上陸を許し、博多、箱崎は焦土と化したと言われますが、元寇防塁を築いた後の1281年の弘安の役では、元軍は上陸できないままに伊万里湾の鷹島周辺で台風に遭い、壊滅したとされています。元軍の侵攻を撃退することができたのは、日本とベトナムなどわずかな国のみであり、元寇防塁は我が国の防衛に決定的な役割を果たした世界史的な遺跡と言うことができます。この元寇防塁は、西区今津から東区香椎まで博多湾に沿って20キロメートルにわたり築かれたもので、福岡市だけに残された貴重な遺跡です。現在、10カ所が国史跡に指定されていますが、都市化の波を受け、かつて海岸に築かれていた景観をとどめているのは、西区今津、今宿、生の松原など3カ所のみとなりました。これらの地域では、海岸の松林の中に累々と石が列をなして続いているさまがうかがわれますが、整備して、かつての石塁の姿がしのばれるのは、今津の100メートル部分と生の松原の50メートル部分にしかすぎません。今津では3キロメートル、生の松原では1.5キロメートルほどの石塁が埋まっているわけですが、これを掘り出して整備し、博多湾岸に石の防塁が連なっているさまを復元してはいかがでしょうか。
 元寇防塁が世界史的に重要な遺跡であることを改めて認識し、スケール感を体感できる形で整備することで、国内外の歴史ファンにとって欠くことができない観光スポットをつくり出すことができると確信しております。これは、同時に新たな市民の財産をつくり出すことであります。国指定史跡ということで、既に国民共有の貴重な財産としての評価は受けているわけですが、現在の元寇防塁を私たちの大事な文化遺産と認識している市民がどの程度おられるでしょうか。史跡の整備を行い、その存在感を世界にアピールすることで、市民のアイデンティティーをはぐくむことにもつながると考えます。大陸との歴史を物語る国指定史跡であり、日本で唯一福岡にしかない元寇防塁を観光資源として活用するため、砂を撤去して顕在化させ、当時のスケール感や情景が想像できるようにすべきだと考えております。その際、ボランティアを募り、市民のかかわりをつくることで、元寇防塁への愛着もわき、市民の認識を高めていくことにつながっていくのではないでしょうか。
 このように、現在ある資源を活用するなど発想を転換し、将来を見据えた積極的な取り組みが必要であると考えますが、今後、どのようにして戦略的な観光、集客に取り組まれていこうと考えておられるのか、御所見をお伺いします。
 次に、博多港の機能強化についてですが、日本の成長戦略は、今後、いかにアジアの成長と活力を取り込むのかというのがかぎとなります。このことは、これまでも多くの論議がなされてきたところであります。アメリカを中心とした20世紀からアジアを中心とした21世紀にシフトしている現在、アジアのダイナミズムを取り込むという点において、やはり歴史的にもアジアと深いつながりを持ち、地理的にも圧倒的な優位性を持つ福岡市が、日本の都市の中でも極めて重要な役割を果たしていくことになると考えます。将来の福岡の成長、ひいては日本の活力を得ていくための大きな柱は、アジアからの物流、人流を取り込むための社会インフラである博多港、その博多港の機能の充実、強化にあると確信しています。
 歴史をひもといても、福岡市の発展は博多港とともにありました。そして今、その延長としてアジアからの物流、人流の大きな流れが博多港を席巻しています。物流については、国際物流が拡大する中、博多港は世界をラウンドする欧州航路の寄港地として組み込まれ、昨年は世界最大級の超大型コンテナ船が就航するなど、アジアの中で確実にその存在感を高めています。そして、博多港の国際海上コンテナ貨物取扱量は、東日本大震災の発生にもかかわらず、昨年は過去最大の85万TEUに達し、アイランドシティや香椎パークポートのコンテナターミナルは満杯に近い状況にあります。この盛況は、背後圏における自動車関連産業を初めとした企業の立地や増産体制に裏打ちされたものであり、今後は、さらに取扱量が増加していくことを前提に考えるべきであります。そして、このことが背後圏の経済活動や雇用の創出にもしっかり貢献していくことになります。
 また、物流とともに港の機能の一翼を担う人流についても、ことしはアジアからのクルーズ寄港も本格化し、クルーズ寄港回数は年間74回を予定し、新たに韓国クルーズが寄港を開始しております。単純計算しても、およそ5日に1度のペースでクルーズ船が寄港し、大変多くの方々が福岡を訪れることになります。さらに、2月から釜山との高速船が新たに乗り入れしましたが、こうした長年の韓国との交流に加えて、中国との交流が今後活況を呈していく中、観光立国の実現に向けて博多港の役割はますます高まっていくものと考えます。
 しかしながら、こうしたアジアからの物流や人流の急速な拡大に対応できる十分な港湾機能が果たして現在の博多港に本当に備わっているのでしょうか。私は大いに疑問を持っています。それは、満杯になっているコンテナターミナルに加え、水深が14メートルしかないため、大型船については、船自体が重量調整をしてからでないと入港できないなどの港湾機能や、他港に比べ、お粗末なクルーズの受け入れ態勢を見ても明らかであります。大きなビジネスチャンスをとらえるための機能が不足しているのであれば、福岡市のみならず、背後圏の、ひいては日本にとってアジアの活力を取り込む大きなチャンスを逃すことにはならないでしょうか。目の前の大きなチャンスを逸することなく、しっかりと将来を見据えて確固たる都市戦略のもと、博多港の港湾機能の充実、強化を急ぐべきであると考えます。
 また、東日本大震災以降、太平洋側を中心として、さらなる大地震発生の警告や大きな余震の予測が国のシンクタンク等から発表されています。地震国であるこの日本において、いかに安心、安全を確保していくのか、万が一の場合、どのような対応をしていくべきなのか、多くの国民が大きな課題を背負っています。日本全体を見回しますと、福岡市はプレート境界からも遠く離れているなど、地震や津波に強い地理的自然条件を備えており、万が一何かあった際には福岡市のポテンシャルを生かして、この国の機能を維持するための大きな役割を担っていくべきではないでしょうか。このためには、博多港における港湾機能の充実、強化は必須であり、将来を見据えた形で一定の余裕を持った整備を進めていくことで、太平洋側の港をバックアップしていく、そのような役割を果たすべきであると考えます。
 そのほかにも、博多港ではこれからのアジア物流を展望し、スピーディーでローコストを実現する国際RORO船専用の新たなターミナルの整備が進んでおり、また、昨年の12月に指定された国際戦略総合特区を活用して規制緩和等にチャレンジするなど、より一層の物流コストの削減を図る将来を見据えた先駆的な取り組みが進められております。また、このことに限らず、昨年、博多港は日本海側拠点港に最高の評価を得て選定されており、国においても、博多港の潜在力や将来性を十分に認めているところであります。
 このように、博多港は福岡都市圏や九州のみならず、日本の港にとっても大変重要な役割を担っています。そして、今がその存在感をさらに高める絶好の機会であります。博多港の整備には多大な費用が必要であるとともに、選択と集中を進めていくためには市民の理解も不可欠であります。このため、博多港の果たす役割や整備効果などについてしっかりと市民に情報発信をしながら、理解を得ていくことが大変重要となってまいります。博多港がこの日本を元気にしていくといった大きな目標を掲げ、市民の後押しを得ながら、拡大する需要に的確に対応することが必要であります。
 今後、コンテナ取扱量は100万TEUは言うに及ばず、150万TEUを達成することも夢物語ではありません。既存のコンテナターミナルの稼働状況から見ると、新たにアイランドシティDコンテナターミナルを整備したとしても、博多港全体でおおむね120から130万TEU程度のキャパシティーしかないと思われ、10年後にはさらにコンテナターミナルは満杯となる状況も当然想定されます。将来を見据えてアイランドシティコンテナターミナルの拡大を図るべく、埠頭用地のさらなる埋め立てについても勉強し、しっかりと準備を整え、いざ鎌倉に備えることが大切と考えます。
 一方、アジア経済の発展と相まって、国際コンテナ物流の拡大は急ピッチに進んでいることから、まずは目の前の課題をスピード感を持って解決していくことが必要となります。このためには、超大型コンテナ船の航行にも十分に対応できる水深15メートルの航路の整備、背後圏へ物流を円滑に輸送するための道路整備など社会インフラの整備が不可欠であります。そして、何よりも既に満杯に近いコンテナターミナルの状況を一刻も早く解消するため、アイランドシティDコンテナターミナルの整備について、スピード感を持って取り組むべきであると考えますが、所信をお伺いいたします。
 最後に、東日本大震災の被災地への支援についてです。
 死者、行方不明者合わせて1万9,000人を超え、今も全国に34万人の避難者の方々がおられる、まさに未曾有の大災害である東日本大震災の発生から間もなく1年がたとうとしております。あれほどの大災害にもかかわらず、当時の日本人のとった秩序正しい行動は世界じゅうの人たちから称賛されました。外国のメディアでは、今回最も大きな災難の中でも秩序意識を失わない日本人に驚きと敬意を表する。地球最悪の地震が世界で一番準備され、訓練された国を襲った。犠牲は出たが、ほかの国ではこんなに正しい行動はとれないだろう。日本人は文化的に感情を抑制する力があるなどと報道されました。他人のことを思いやる日本人には本当にすばらしい心があります。これはGDPの数字の大きさなどでははかれない、何物にもかえがたい世界に誇れる国民の力だと思います。
 そのような状況の中、例えば、市役所や区役所では義援金箱はもう置いていないようですが、やはり身近なところに義援金箱のようなものがないと、幾ら日赤などに募金をといっても、わざわざ振り込みに行ったりしないのではないかと思います。
 また、私も昨年の6月に我が会派の同僚と一緒にボランティアとして現地に入ってわかりましたが、あれだけの悲惨な状況からすると、ボランティアの派遣に関しても継続して取り組んでいかねばならないと思います。震災発生から1年を経過し、被災地で活動するボランティアが減少の一途をたどっているとの報道も目にしますが、福岡市として、もっとボランティア活動が活発に行われるような取り組みも必要ではないか、そうしないと震災自体が風化し、だんだん忘れ去られていくのではないかと非常に危惧しております。
 そこで、福岡市はこれまでの1年間、職員の派遣や市営住宅の提供などさまざまな支援に取り組んでこられましたが、これで終わりにすることなく、これからも息の長い継続的な支援を続けていかねばならないと思いますが、御所見をお伺いいたします。
 以上、みらい福岡市議団を代表しまして質問してまいりましたが、冒頭でも申し上げましたように、我が国の経済情勢はいまだ先行きが見えません。しかしながら、このような厳しい状況下であるからこそ、しっかりと将来を見据え、百年の計をもって市政運営を行う必要があると考えます。未来を担う子どもたちが豊かな自然と共生の中で夢をはぐくみ、あすへの希望に胸を膨らますことができるまち福岡を実現するため、常に新たな時代の潮流を的確に見きわめ、事業の選択と集中や効率化をさらに進め、持続可能な財政構造を確立しなくてはなりません。このような厳しい社会情勢の中で閉塞感漂う時代にこそ、市長みずから職員の先頭に立って実行力を発揮し、さまざまな施策や課題に鋭意取り組まれることを期待し、私の質問を終わらせていただきます。御静聴、どうもありがとうございました。

◯市長(高島宗一郎)登壇 おはようございます。ただいま、みらい福岡市議団を代表して笠議員より御質問いただきましたので、私から御答弁をいたします。
 最初に、行財政改革の推進についての御質問にお答えをいたします。
 まず、平成24年度予算案につきましては、市民の暮らしの質を高め、都市の成長を確実なものとしていくため、財政規律と投資とのバランスを図りながら、福岡という都市の価値を戦略的に高める予算を編成したところであります。
 財政健全化の取り組みにつきましては、臨時財政対策債の発行額が大幅に増加する中、選択と集中によりその他の市債発行額の抑制に努めた結果、全会計の市債残高は126億円縮減する見込みとなっております。
 また、民営化などによる職員数の削減や既存事業の見直し、重点化など歳出の見直しを徹底するとともに、市税収入率の向上や広告料収入など多様な財源確保に取り組み、およそ88億円の財源を捻出したところであります。
 福岡市の財政は、市税収入を初めとする一般財源の大幅な伸びが期待できない中、公債費は依然として高い水準にあり、少子・高齢化の進行に伴う社会保障関係費の増加に加え、今後は社会資本の大量更新期の到来に伴う維持更新費の増加が見込まれるなど厳しさを増していくことが予測されます。そのため、平成24年度は議会を初め、市民や有識者から御意見を伺いながら、今後の財政運営の基本的な方針となる次期財政健全化プランの策定に取り組むこととしており、さらなる財政健全化に取り組んでまいります。
 次に、職員定数の削減につきましては、事務事業の見直しや業務の民間委託などに取り組み、外郭団体などへの派遣を含めた総定員を平成26年度までに9,800人体制とする目標を平成23年度に3年前倒して達成したところであります。
 さらに、平成24年度はスクラップ・アンド・ビルドの徹底を基本理念に、さらなる民間委託や事務事業の見直しを進め、縮減する一方で、安全、安心の確保や子育て支援、戦略的な観光、集客の実現に向けた必要な部署の強化など戦略性の高い分野への積極的な増員を図り、差し引きで27人を純減したところであります。
 守衛業務につきましては、本庁舎における守衛の現場業務を民間警備員により実施することといたしております。
 次に、自動車運転業務につきましては、乗用系車両の集中管理などにより運行体制をさらに効率化し、平成24年度から平成26年度までの3年間で対象車両の3分の1程度を減車し、職員定数の削減を図っていきます。
 また、小学校給食につきましては、学校教育の一環としてこれまでどおり安全、安心でおいしい給食の提供に配慮しながら、各学校で職員が行っている調理や食器洗浄などの業務について民間委託を試行することとしております。
 今後とも、必要な効果検証を行いながら、すべての業務や事業について民間が担うことができるものは民間にゆだねるという考え方に立ち、簡素で効率的な行政運営を推進してまいります。
 次に、外郭団体の見直しにつきましては、外郭団体経営評価システムを活用し、経営状況の評価や点検を行うとともに、平成20年6月に策定した第2次外郭団体改革実行計画に基づき、事業分野が類似している団体の統合や事業の民間移譲など見直しを進めてまいりました。その結果、平成22年度にスポーツ振興事業団と体育協会を統合したところであり、平成23年度末には下水道資源センターを廃止することとしております。
 さらに健康づくり財団及び海づり公園管理協会については、新しい指定管理者の選定などの手続に一定の期間を要することから平成24年度末までに廃止することとしており、合計で4団体を削減する予定であります。
 また、今後さらに外郭団体の見直しを推進していくため、平成22年度及び平成23年度の2カ年で各団体の事業、財務、組織、団体運営及び成果について、団体や所管局が自己評価を行い、課題を整理するとともに、外部の専門家である監査法人を活用して客観的な経営評価を行ったところであります。平成24年度は、この経営評価の中で団体や所管局が自己評価し、課題とした事項について、その解決、改善に取り組んでいくことはもとより、次期行政改革プランの策定とあわせて、第2次外郭団体改革実行計画を改定する予定であり、その中で外郭団体経営評価システムや監査法人などによる経営評価も活用しながら、外郭団体で実施している事業の必要性や各団体の存在意義について、さらなる検証を行い、見直しを進めてまいります。
 次に、福岡市の成長戦略のための投資についての御質問にお答えをいたします。
 まず、観光、集客への取り組みにつきましては、福岡市がアジアにおいて存在感のある都市となっていくため、都市の成長エンジンをつくり、持続的に活力を生み続ける都市づくりを進めていく上で大変重要であると認識をしております。
 また、これまで十分に活用されていなかった歴史的文化資産が福岡市内に数多く存在することから、これらを魅力ある観光資源に磨き上げることにより、回遊性を高め、国内外の人々の関心を引きつけ、交流人口の拡大につなげていく必要があります。
 このため、文化財部門と観光、集客部門が一体となった経済観光文化局を新設し、鴻臚館跡、福岡城跡などにおいて、デジタル技術を活用した当時の情景などを体感できる仕組みを導入するとともに、元寇防塁や金印公園などの歴史資産の活用の検討を進めてまいります。その中で元寇防塁については、博多湾沿岸20キロメートルに及ぶ国史跡であり、日本はもとより、世界の歴史上重要な史実を現在に伝えるものであることから、当時の臨場感を体感できるような見せ方を検討してまいります。
 また、赤煉瓦文化館や旧福岡県公会堂貴賓館を初め、福岡に残されている重要な歴史文化資産をつなぎ、回遊性を向上させるため、福岡オープントップバスの運行を活用するとともに、体験型観光商品「福たび」の充実に努めてまいります。
 さらに都市の魅力を生かした観光、集客都市の形成に向け、官民一体となって取り組むための新たな集客戦略を策定し、積極的な観光、集客に取り組んでまいります。
 次に、博多港の港湾機能の強化につきましては、日本海側拠点港の最高評価での選定や国際戦略総合特区の指定を最大限に活用し、物流、人流の両面において戦略的に取り組んでまいります。アジアの経済成長などに伴う国際物流の拡大から、平成23年は国際コンテナ貨物取扱量が過去最大の85万TEUを達成し、既存のコンテナターミナルは満杯に近い状況にあり、今後ともコンテナ貨物取扱量は増加が見込まれることから、世界最大級のコンテナ船の入港にも対応できるアイランドシティDコンテナターミナルの早期整備に向けて、国と一体となって取り組んでまいります。
 また、円滑な物流ネットワークを構築するため、航路や臨港道路など海上輸送や陸上輸送の強化を図ってまいります。さらに、日本海側では唯一就航する欧州、北米との長距離基幹航路やアジアダイレクト航路の拡充に取り組むとともに、東アジアに近い地理的優位性を最大限に活用し、博多港ならではの高速RORO船による物流機能の充実に取り組むため、箱崎ふ頭においてスピーディーで環境負荷の低減に貢献する国際・国内ROROターミナルの整備を推進してまいります。
 博多港は、福岡市のみならず、背後圏の経済活動や市民生活を支え、将来の成長エンジンとなるものであることから、今後とも市民の皆様に博多港により高い関心を持っていただけるようわかりやすい情報発信に積極的に取り組むとともに、博多港の将来を見据えつつ、官民労一体となって国際競争力のある港づくりを進めてまいります。
 最後に、東日本大震災の被災地への支援についての御質問にお答えをいたします。
 まず、平成23年3月11日の震災発生から間もなく1年を迎えるに当たり、改めて亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、今なお避難生活を余儀なくされている方々へお見舞いを申し上げます。
 私も平成23年7月に岩手県陸前高田市を視察し、戸羽市長にお会いしてお話を伺うとともに、ふくおか元気応援隊の皆さんと一緒にボランティア活動を行ってまいりました。そこで、実際に津波の被害を見て自然の脅威を改めて認識するとともに、復興の困難さを直接肌で感じたところであります。
 また、この視察の中で、行政機能をフォローするためには都市間の連携を有効にしていかなければならないこと、災害の情報を市民にくまなく、いち早く伝えなければならないこと、行政が機能しない中でのコミュニティやボランティアなど人と人とのつながりの大切さを強く感じたところであります。福岡市では、震災発生直後から義援金の受け付け、救援物資の送付、専門職員の派遣、受け入れ被災者への市営住宅の提供などを行うとともに、5月からは職員と市民から成るボランティア隊、ふくおか元気応援隊の派遣などの支援を行ってまいりました。
 また、「がんばろう日本」福岡・九州推進協議会と連携してがんばろう日本・ふくおか応援基金事業を実施し、市民からの募金をもとにさまざまな支援活動を行うボランティア団体へ助成金を支給するなど、継続的なボランティア活動の促進を図ってまいりました。
 その結果、ふくおか元気応援隊などへの参加をきっかけに市民が仲間を募って新たな活動を始めるなどボランティア活動が市民の間に広がりを見せ、持続性を持ったさまざまな支援活動が行われるようになりました。
 さらに、震災発生から1年に当たる今月11日には、市役所西側のふれあい広場において、これらのボランティア団体が中心となって主体的に運営するイベントを開催し、市民に継続的な支援を呼びかけることとなっております。
 また、義援金につきましては、震災発生の翌日から5月末まで、本庁、区役所、公民館などの市の施設およそ170カ所で土日も含めて受け付けるとともに、6月からは義援金にかえてボランティア団体へ助成するふくおか応援基金への募金を12月末まで受け付けたところです。市民の皆様から寄せられた義援金は総額6億5,000万円に上り、被災された各県に4月以降、4回にわたって直接お届けし、いち早く被災者へお渡しすることができました。現在、義援金については、日本赤十字社などの公的機関を御案内しているところでございます。
 今後とも、職員の派遣や市営住宅での受け入れを継続するとともに、ボランティア団体への支援を行うことにより、官民一体となって東日本大震災の被災地への息の長い支援を行ってまいります。
 以上、市政各般にわたり御答弁いたしましたが、承りました御意見、御提言に留意し、市民の代表である議会との対話を真摯に進めてまいります。私は福岡市民の暮らしの質を高めるために人と投資を呼び込み、都市の成長を実現する取り組みを進めることにより、アジアのリーダー都市福岡の実現を目指して全力でこれからの市政運営に取り組んでまいります。よろしく御協力をお願いいたします。




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