水城 議員の一般質問

◯41番(水城四郎)登壇 おはようございます。水城四郎でございます。私は、みらい福岡市議団を代表し、発言通告に従い順次質問してまいります。当局の明確な答弁を期待いたします。
 まず、災害時に人命救助に有効なヘリサインの整備についてお尋ねします。
 福岡県を初め全国的に梅雨入りし、いよいよ水害への警戒が必要な時期となってきました。近年は、ゲリラ豪雨が発生するとともに、水害は大規模化、広域化する傾向となっているように感じます。
 また、福岡市の中心部を走っている警固断層帯を震源とする地震が発生する可能性は、専門機関の調査によると発生確率が最も高いグループに属し、地震の規模はマグニチュード7を超えるとされており、福岡市が大規模、広域的な災害の発生リスクを抱えていることは皆さん御存じのとおりだと思います。
 災害対策は重要な問題であるため、優先的に取り組む課題を認識し、来るべき災害に備え、平時から災害対策の取り組みを進めていくとともに、随時、取り組み内容に改善を加えていくことが必要です。
 今回の質問は、公助の視点から、大規模、広域的な災害へ対処するための応援、受援の計画や体制づくりについてお尋ねするものであります。
 大規模、広域的な災害へ対処するためには、防災関係機関や他都市と連携した災害対応を行う必要がありますが、人命救助において特に有効な活動を行えるのはヘリコプターです。
 東日本大震災のときには、福岡市のヘリコプターを初め、全国の消防防災ヘリや他の防災機関のヘリが人命救助、空中消火、情報収集、物資搬送などの活動を行いました。また、ヨーロッパにおいては、大規模災害や事故においてヘリコプターの有効性が証明されています。
 広域災害において大きな力を発揮するヘリコプターを有効に活用できる環境を整備することは、本市で大規模災害が起こった際に多くの市民の生命を救うことにつながります。
 その中でも、上空にあるヘリコプターから目視で確認できるヘリサインの整備は、本市の地理に精通していない自衛隊や警察などの消防関係機関や他都市のヘリコプターによる迅速な活動体制につながる大変有意義なものであります。
 ヘリサインについて簡単に説明しますと、施設の屋上などに施設名などを上空から判別できるように明記し、災害時においてヘリコプターの活動場所などを特定するための目印となるものであり、例えば、市役所や学校などの屋上に建物名称などを示したものがあります。東日本大震災時において、耐震性のある学校や市役所、病院などは倒壊していないことから、これらの施設に平時からヘリサインを整備しておくことは、ヘリによる災害活動や物資搬送活動などにおいて大変有効的であると考えます。
 そこで、一分一秒を争う災害現場で、より迅速かつ効率的な活動を進めるために、有効なヘリサインの整備について質問してまいります。
 まず、福岡市や他都市におけるヘリサインの整備につきまして、取り組みの状況をお尋ねいたします。
 以上で1問目の質問を終わり、2問目以降は自席にて行います。


◯市民局長(井上るみ) ヘリサインにつきましては、福岡市ではヘリコプターの緊急離着陸場7カ所と要救助者を救助するための緊急救助用スペースの39カ所、計46カ所に整備されております。
 具体的には、緊急離着陸場にはヘリポートの頭文字であるHが、緊急救助用スペースにはレスキューの頭文字であるRが表示され、それぞれに3桁の認識番号があわせて表示されております。このほか、病院など5カ所のヘリポートにHのみ表示されたものがございます。
 他都市の取り組み状況につきましては、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県と、その中の5政令市においてヘリサインの表示方法等について申し合わせた上で、公立学校や病院等の公共施設への整備を平成14年度から進められています。九州では、熊本県が平成23年度に県や市町村の防災拠点に施設名を表示したヘリサインを整備されています。以上でございます。


◯41番(水城四郎) 2問目です。
 Hと表記されている屋上緊急離着陸場やRと表記されている緊急時救助用スペースは合わせると46カ所もあるわけですが、このマークと認識番号は自衛隊や警察、他都市の消防機関など誰が見てもわかるような統一の基準によるものであるのか、お尋ねいたします。


◯消防局長(谷山 昭) 緊急離着陸場及び緊急救助用スペースを示すHやRのマークは、国の通知に基づき表示されており、消防機関においては統一された基準でございますが、福岡市においてHやRのマークとあわせて表示している3桁の認識番号については、福岡市独自の基準に基づき表示しているものでございます。
 現在のところ、全国で数字や文字の様式も含めて統一されたヘリサインの表示はないことから、福岡市のヘリサインについても誰が見てもわかるものとはなっておりません。以上でございます。


◯41番(水城四郎) 私の考えるヘリサインは、最初に申し上げたとおり、例えば、市役所や学校などの屋上に建物名称などを示したものであり、このようなヘリサインは福岡市にはないという理解で質問を続けます。
 まず、福岡市のヘリコプターが市内で活動する場合、どのようにして位置情報を把握し、災害発生場所を特定しているのか、お尋ねします。


◯消防局長(谷山 昭) 福岡市が保有する2機のヘリコプターには、いずれもGPS等を搭載しておりまして、これを活用して災害発生場所付近に出動し、最終的には目視によって災害発生場所を特定いたしております。
 福岡市消防局の航空隊員は、福岡市内の地形や建物の状況等を熟知いたしておりますことから、スムーズに災害発生場所を特定できております。以上でございます。


◯41番(水城四郎) 本市のヘリ2機にはGPSが搭載されており、これによる位置情報で大まかな位置は特定できるものの、やはり現場の特定には目視が必要だということです。
 東日本大震災の際も、福岡市の消防ヘリは東北地方への支援活動に赴き活動していますが、そのときの福岡市のヘリの活動状況と当該活動において救助等を必要としている場所を特定した方法、また、その場所の特定がスムーズに行えたかどうか、お尋ねします。


◯消防局長(谷山 昭) 福岡市の消防ヘリコプターは、東日本大震災時には福島県内におきまして3日間にわたり救助活動、行方不明者の捜索活動、津波への警戒活動などを行いました。
 活動場所の特定は、福岡市内と同様にGPS等で大まかな場所を把握し、最終的には目視によって場所を特定いたしましたが、被災地の地理を熟知していないことや、地震や津波により地形や建物の状況等が変化していることもあり、福岡市での活動と比較いたしますと、場所の特定に少し時間を要したものと考えております。以上でございます。


◯41番(水城四郎) 福岡市では、警固断層帯南東部を震源とする地震が懸念されており、地震の発生した際の社会的影響が大きいことから、文部科学省により調査観測が実施され、その結果は近々公表される予定と聞いております。
 平成17年に発生した福岡西方沖地震の際もヘリコプターが非常に有効であったと記憶していますが、こうしたヘリコプターの活動実績等を踏まえ、警固断層帯南東部を震源とする地震が発生し、福岡市域で大規模な災害が発生した場合に、ヘリコプターをどのように活用する計画となっているのか、お尋ねします。


◯市民局長(井上るみ) 大規模災害時のヘリコプターの活用につきましては、通常、消防ヘリが行っている消火、救助、救急活動などに加え、情報収集活動、緊急輸送といった災害応急活動に幅広く活用することとしております。以上でございます。


◯41番(水城四郎) 福岡市域で直下型地震などの大規模地震が起こった場合の防災関係機関や他都市からのヘリの受け入れについて、どのような機関あるいは都市からの受け入れを想定しているのか、お尋ねします。


◯市民局長(井上るみ) 大規模災害が起こった場合に、ヘリコプターの受け入れを想定している関係機関等につきましては、福岡県警や海上保安庁、国土交通省九州地方整備局、自衛隊などの各防災関係機関に加え、北九州市、長崎県、熊本県など九州及び四国、中国地方のヘリ保有自治体からの受け入れを想定しております。以上でございます。


◯41番(水城四郎) これまでの答弁を伺う限り、公共施設の屋上に建物の名称などを示すようなサインを整備することはやはり必要に感じますが、東日本大震災で活動した経験を踏まえ、福岡市において大規模地震等が発生し、他都市や他機関からのヘリを受け入れた場合のヘリサインの有効性をどのように考えているのか、所見を伺います。


◯消防局長(谷山 昭) 東日本大震災時の経験を踏まえますと、福岡市の地形や建物の詳細を把握していない他都市や他機関のヘリコプターは、活動場所の特定に一定の時間を要するものと考えられますので、誰が見てもわかるようなヘリサインは有効であると考えております。以上でございます。


◯41番(水城四郎) それでは、これまでにヘリサインの整備について検討したことがあるのか、お尋ねします。


◯市民局長(井上るみ) ヘリサインの整備に関するこれまでの検討状況につきましては、平成21年3月に総務省消防庁が主催した検討会においてヘリサインの有効性が認められたことを受けまして、平成22年度より福岡県と広域的な対応を目的として協議を行ってまいりましたが、現時点では具体的な検討を行うまでには至っておりません。以上でございます。


◯41番(水城四郎) 協議が実現していないということですが、やはり2級河川の問題を見てもわかるように、県主導では進まないのではないかと感じております。ヘリサインは総務省消防庁もその有効性は認めており、既に着々と整備が進められている県や市もあり、近隣では熊本県と熊本市においても整備が進んでおります。ここに示しておりますように、(パネル表示)屋上にきちんと文字が表記されているわけであります。
 大規模災害時には、続々と応援ヘリが本市に集結し、その際にヘリサインがあれば、本市の地理にふなれな他都市からの応援ヘリの活動が円滑になります。すなわち、多くの福岡市民の生命を救うことにつながります。このようにヘリの災害活動において極めて有効であることから、福岡市においても今後、施設の屋上にヘリサインを整備すべきと考えますが、所見を伺います。


◯市民局長(井上るみ) ヘリサインの整備につきましては、広域での実施が有効であると認識しており、統一的なサインの基準等も含め、実際にヘリコプターを運用しております各防災関係機関や福岡県、福岡都市圏などの行政機関と協議、検討を進めてまいります。
 なお、現在整備されているヘリサインにつきましては、福岡県警、海上保安庁、国土交通省九州地方整備局、自衛隊などの各防災関係機関と情報共有を図ってまいります。以上でございます。


◯41番(水城四郎) 冒頭でも申し上げましたが、大規模、広域的な災害へ対処するためには、防災関係機関と連携した災害対応を行うことが不可欠であり、ヘリの応援については、自衛隊や警察、場合によっては、米軍の受け入れも考えておかなければなりません。
 先ほど福岡市で設置しているヘリサインについて、防災関係機関での共有を図るとの答弁もいただきましたが、私は、防災拠点となる公共施設の屋上などに誰が見てもわかるヘリサインを設置すべきと考えており、福岡市が率先して実施することで、他の自治体への広がりも期待できるのではないでしょうか。
 災害対策は、特に平時において一歩一歩積み上げを進めていかないと意味がありません。命を守る災害現場において応援ヘリが迅速に活動できるためには、ヘリサインの整備が重要であり、必要なものであると確信していますので、ぜひ実現していただくよう強く要望して、この質問を終わります。
 続きまして、国際戦略におけるミャンマー、ヤンゴン市との覚書締結についてお尋ねします。
 私は、本年3月の総会質疑で、水道関係において、福岡市は、残念ながらただの技術協力を行っているだけで、国際貢献の域を越えず、自己満足に終わっており、国際戦略についても見直すよう指摘いたしました。
 それを踏まえ、見直したと聞いておりますが、今回少し進展があったように思います。具体的には、市長が去る5月15日にミャンマー、ヤンゴン市において、福岡市とヤンゴン市とのまちづくり協力・支援に関する覚書を締結されたと聞き及んでいます。ミャンマーは伝統的な親日国であり、また最後のフロンティアとして世界から注目されており、福岡市がミャンマーへ国際貢献、国際協力に取り組むことは賛成しており、今回の覚書締結も大いに評価しております。また、これまで私が辛口で言ってきたかいもあったと、うれしく思っております。
 しかしながら、前回、中国国家外国専家局との覚書の問題がありましたので、今回のヤンゴン市との覚書締結について一度整理し、確認する必要があると考え、質問してまいります。
 まず、今回のヤンゴン市との覚書の内容はどのようなものなのか、お尋ねいたします。


◯総務企画局長(中村英一) 今回の覚書は、他都市に先駆けてJICAの専門家として職員を派遣しているヤンゴン市とビジネス展開を視野に、さらなる都市間連携の強化に向け締結したものでございます。
 具体的な内容は、上水道、下水道、ごみ処理分野などのまちづくりに関する協力、支援関係を構築しようとするもので、その取り組みの手順や知的所有権の取り扱い、紛争解決などの基本的事項について両市が合意したものでございます。
 覚書に基づく具体的な取り組みにつきましては、ヤンゴン市に水道局職員の派遣を継続するとともに、今後の海外展開の足がかりとするため、ヤンゴン市における福岡市の住みよいまちづくりセミナー開催やヤンゴン市職員の研修受け入れなどを行っていくこととしております。以上でございます。


◯41番(水城四郎) 今の答弁で、協力関係については上水道分野だけでなく下水道やごみ処理分野など新たな項目を具体的に明示しており、これまでより一歩進んだ内容になっていることは認めます。
 それでは、覚書の内容が安全保障の面で福岡市が守るべき技術や情報の漏えいは本当に大丈夫なのか、また、万一の紛争解決は大丈夫なのか、お尋ねします。


◯総務企画局長(中村英一) 今回の覚書の内容は、各分野の基礎的な技術協力や情報提供を行うものであり、高度あるいは先端技術は対象としていないことから、福岡市として守るべき技術や情報が流出することはないと考えております。
 また、覚書では、知的所有権については、両国それぞれの関係法令にのっとり保護すること、プロジェクト等が知的財産となった場合は、両市共同の知的財産とし、別途取り決めを締結すること、情報の開示が必要な場合は、条件などについて書面同意を得ること、覚書の解釈や履行において疑義が生じた場合の紛争解決については、両市間の協議により友好的に解決することを規定しております。
 さらに、今回の覚書については、事前に外務省、内閣官房やJICAに相談し、助言を得るなどの対応もとっておりまして、しっかりとした内容になっていると考えております。以上でございます。


◯41番(水城四郎) 今の答弁を聞きますと、安全保障面は何とか大丈夫のように見受けられます。そういう内容であれば、2年前の中国国家外国専家局との覚書に比べ進歩したと、一旦は評価できます。しかしながら、紛争解決については、伝統的な親日国であるミャンマーという国を考えれば、起こらないことを前提にしたいけれども、国際関係において万が一については友好的な解決にならない場合も想定しなければなりません。
 私も覚書の条文を読みましたが、日本国内であれば十分な規定と考えますが、国際的に見れば紛争解決の詳細については、今後詰めていくべきと考えますが、御所見を伺います。


◯総務企画局長(中村英一) 国際関係においては、友好的な約束が根底から覆るような情勢の変化をも想定し、さまざまなリスクに対応できるよう備えることが重要と考えております。水城議員御指摘のようなことが起こらないよう、今後とも、相手方との信頼関係をさらに深めるとともに、覚書に基づく具体的な取り組みを進めていく中で、関係省庁や機関の指導や助言を得ながら、万一の場合の紛争解決の詳細についても、適宜遺漏がないよう取り決めてまいりたいと考えております。以上でございます。


◯41番(水城四郎) ぜひこの紛争解決についても、今後しっかりと対応を考えていただきたいと思います。
 ミャンマーについては、世界中の国々が競ってアプローチをしている状況です。そのような中、今回のヤンゴン市との覚書締結の意義は、より深い関係をお互いが認識し合い、パートナーシップのきずなを深めることだと私は思っています。
 そこで、今回の覚書締結の意義について御所見を伺います。


◯総務企画局長(中村英一) 今回の覚書締結の意義につきましては、国内自治体だけなく、世界中の国が次々とミャンマーに進出している中、人口500万人を抱えるヤンゴン市が福岡市のまちづくりを高く評価し、福岡市とのパートナーシップを深めたいとの意思表示がなされたもので、今後、具体的な事業の進捗やビジネスへの展開が期待されるものと認識をしております。
 なお、日本政府は、経協インフラ戦略会議において、地元企業の海外展開を支援するためには都市インフラを管轄する地方政府との関係を構築することが重要といたしておりまして、今回の覚書締結は国の戦略に沿ったものとして期待すると評価をいただいているものでございます。以上でございます。


◯41番(水城四郎) 先日、ヤンゴン市に住む友人から、地元の新聞に福岡市とヤンゴン市とのまちづくり協力、支援の覚書についての記事を見た、ぜひ福岡市にお願いしたいとの連絡が相次ぎました。地元の新聞にも掲載されたということは、今、世界中から注目されているミャンマー最大の都市ヤンゴン市が福岡市に対する期待を発信しているものであると私は考えています。
 国際貢献を通じた海外ビジネス展開については、本年3月議会で御答弁をいただいていますが、私は、財源確保の観点で申しておりますので、しっかりビジネス展開もやってもらいたいと思います。
 そこで、改めまして今後のビジネス展開についての御所見を伺います。


◯総務企画局長(中村英一) 国際貢献を通したビジネス展開につきましては、副市長をトップに関係各局長で構成する国際貢献、国際展開の推進会議を来月早々には設置いたしたいと考えております。あわせて外務省やJICAの出身者、海外ビジネス経験者など外部の知見も活用しながら、国際貢献、国際展開の取り組みを加速してまいりたいと考えております。
 また、現在開催しております地場企業を対象とした上下水道分野における国際展開に向けた勉強会を継続し、企業との意見交換や事例研究を行いながら官民連携の仕組みづくりを進め、JICAなどとの連携もさらに強化し、ODA案件などの受注を目指してまいりたいと考えております。以上でございます。


◯41番(水城四郎) 今回のヤンゴン市との覚書については、これまでの助言を生かし、過去の反省を踏まえ、総務企画局国際部が一歩前進したものと私は評価しております。
 最後に、ビジネス展開についてしっかり取り組んでいただくことはもちろんですが、今後、福岡市とヤンゴン市が良好な関係をさらに深めることを希求しています。その理由としまして、私は、今回の覚書の締結については何かしらの縁を感じております。
 戦時中、ミャンマーにはこの福岡からも多くの兵士が出兵し、いまだ多くの遺骨が眠っています。今回の福岡市の支援、協力が、心ならずも日本に帰れなかった多くの英霊の方々への供養になると思っていますし、また、戦後69年にわたって戦没した日本人の供養を黙って続けてくださっているミャンマーの人々への恩返しになると私は考えております。そのような気持ちで、総務企画局国際部へは、より一層の取り組みを期待、要望して、この質問を終わります。
 次に、特定失踪者問題における本市の対応についてお尋ねします。
 北朝鮮当局による拉致は、日本国憲法に定めるところの精神的自由、人身の自由、経済的自由といった、いわゆる基本的人権を侵害する重大な人権犯罪です。国連の北朝鮮人権調査委員会がことし2月に公表した報告書の中でも、1960年から1980年代にかけて、韓国や日本、その他の国々の数百人の人々が拉致及び強制失踪させられていると明記されています。また、北朝鮮による人権侵害は国際法上深刻な犯罪である人道に対する罪に当たると認定し、厳しく北朝鮮を非難しています。
 拉致問題は、平成14年9月に当時の小泉純一郎首相が北朝鮮を訪問し、故金正日総書記が日本人拉致を認め、翌10月に拉致被害者5名が帰国してから、残念ながらこの10年以上、これといって大きな進展はありませんでした。
 しかし、長年沈黙を続けたこの問題ですが、皆様御存じのとおり、ことしようやく動き始めました。3月に横田めぐみさんの御両親である横田滋さん、早紀江さん夫妻がウランバートルでめぐみさんの娘であるキム・ウンギョンさんと面会され、また5月には日朝外務省局長級協議が行われ、政府は先月29日、北朝鮮側が拉致被害者等の包括的かつ全面的な調査の実施を約束したと発表しました。北朝鮮側は、生存者が発見された場合、帰国させる方向で協議し、必要な措置を講じるとしている上に、この再調査の対象は、横田めぐみさんら帰国していない政府認定の12人の拉致被害者に加え、特定失踪者も含まれています。
 特定失踪者とは、民間団体である特定失踪者問題調査会が、北朝鮮による拉致かもしれないという御家族の届け出を受け、独自に長年調査の対象としている失踪者のことです。これまで調査の対象になっていなかった特定失踪者が今回初めて調査の対象になったことは、非常に大きな進歩です。
 今月9日、菅官房長官が記者会見で再調査に関し、特定失踪者のリストを北朝鮮側に提示していることを明らかにしました。調査会では約470人を特定失踪者として認定し、そのうち77人を拉致濃厚としており、私たちが住むこの福岡市にも拉致濃厚な特定失踪者の方が数名おられ、拉致の可能性が排除できない方も十数名おられます。
 調査会が公開しているリストのうち、福岡県関連の失踪者は6名としていますが、福岡県警のホームページでは、拉致の可能性を排除できない行方不明者として19名の方の名前が公開されています。長年、救出活動に携わってきた私でも、耳にしたことのない名前が含まれている中、市内の方の名前も数名あり、大変驚いているところであります。
 また、昨年末、特定失踪者が北朝鮮国内で生活しているとの情報が北朝鮮から伝えられたことを複数の政府関係者が明らかにしており、北朝鮮側は特定失踪者を帰国させることを検討していると見られます。その場合、福岡市の方が帰国される可能性も十分あります。私は、帰国される特定失踪者の方が生活に困ることがないよう、市としても準備をしていかなければならないと考えます。
 8年前の平成18年9月議会で、いわゆる北朝鮮人権法について、当時の山崎市長の御決意をお尋ねしました。このとき市長は、北朝鮮人権法が施行されたことを踏まえ、国や県と連携しながら、また、この問題に取り組む民間団体の意見もお聞きしながら、法の趣旨に基づいた事業の実施をしてまいりますと、前向きな答弁をいただきました。
 また、当時、北嶋雄二郎市民局長からは、北朝鮮人権法に基づき、拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題に関する市民啓発を実施する旨の答弁をいただきました。
 これを受け、福岡市において、さまざまな啓発活動を行ってきましたが、来る6月29日に開催される啓発集会は、これは昨年に引き続き大臣も出席され、私も参加しますが、高島市長も参加されると伺っています。
 本市議会におきましても、全議員の御協力をいただき、平成24年6月に国会及び関係行政庁宛てに、全力を挙げて全ての拉致被害者を早急に救出されるよう強く要請した拉致問題に関する意見書を提出したところであります。
 拉致被害者家族は高齢化し、もう時間がありません。したがって、拉致問題の解決は急務です。この機会に福岡市として拉致問題にどう取り組んでいくのか、被害者の方の帰国された場合も想定して、改めてお尋ねしたいと思います。
 まず、平成18年6月に公布、施行された北朝鮮人権法について、その目的、内容はどのようなものか、平成18年9月議会の際にもお尋ねしましたが、おさらいの意味も含めてお伺いいたします。


◯市民局長(井上るみ) 北朝鮮人権法の目的につきましては、北朝鮮当局による人権侵害問題に関する国民の認識を深めるとともに、国際社会と連携しつつ、人権侵害問題の実態を解明し、その抑止を図るというものであります。
 その内容につきましては、国の責務として、日本国民の拉致の問題を解決するため、最大限の努力をすること等を定めており、地方公共団体の責務として、北朝鮮当局による人権侵害問題に関する国民世論の啓発を図るよう努めるものとされております。
 また、12月10日から16日までを北朝鮮人権侵害問題啓発週間と定め、国及び地方公共団体は、同週間の趣旨にふさわしい事業が実施されるよう努めることとされております。以上でございます。


◯41番(水城四郎) 拉致問題の解決は国の責務として行われるものですが、国の取り組みを進めるためには、国民の世論の後押しが必要です。そのための北朝鮮人権法に明記された地方公共団体の責務である市民に向けた啓発について、福岡市はこれまでどのような取り組みを行ってきたか、お伺いいたします。


◯市民局長(井上るみ) 福岡市の取り組みにつきましては、平成18年度より北朝鮮人権侵害問題啓発週間に合わせまして講演会と写真展を開催しております。昨年は、拉致被害者横田めぐみさんの御両親である横田滋さん、早紀江さんをお招きして講演会を行いました。また、市政だよりに啓発記事を掲載するほか、拉致問題解決に向けて活動されている民間団体への支援として、ハートフルフェスタ福岡での啓発ブースの提供や北朝鮮人権侵害問題啓発集会における会場の提供などを行っております。今後も、こうした取り組みを通じまして、市民の皆様一人一人が拉致問題を自分たちの身近な問題として考えていただけるよう、啓発活動に努めてまいります。以上でございます。


◯41番(水城四郎) 今回の北朝鮮と日本政府の交渉において、事態はかなり進展してきており、これを受けて拉致被害者及び特定失踪者の方々が帰国されることが予想されます。
 福岡市に帰ってこられた場合、拉致によって奪われた生活基盤の再建と将来にわたって安心して生活できる支援はどのようにするのか、福岡市の対応についてお伺いします。


◯保健福祉局長(中島淳一郎) 帰国後の拉致被害者への支援につきましては、北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律において、国及び地方公共団体の責務が定められており、これに基づき、福岡市においても国、県及び関係機関と連携しながら、生活、雇用、戸籍、年金等に関する必要な支援を行ってまいります。以上でございます。


◯41番(水城四郎) 最後になりますが、拉致被害者の方々が確認され、本当に長い年月がたちました。被害者の方々は一日も早い救出を待ち望んでおられます。私も特定失踪者問題調査会の理事として、政府が認定している拉致被害者12名以外の特定失踪者についても調査対象に含めてもらえるよう、長年政府に働きかけてまいりました。そして、今回改めて政府が特定失踪者も含めた全ての日本人について拉致問題の全面解決を図ると約束してくれました。そして、北朝鮮へ渡した再調査のリストに特定失踪者も加わるなど、大きな進展となりました。
 本市にも、芥屋の海岸で行方不明になった三浦和彦さんや、当時、中央区在住の波多野幸子さんなど、数名の特定失踪者の方がおられます。今後、進展が見込まれると判断されれば、安倍総理の訪朝が実現する可能性もあり、さらなる早期の帰国が見込まれます。福岡市に帰ってこられる拉致被害者や特定失踪者の方々を万全の態勢で受け入れる準備をしていただくよう要望いたします。
 拉致問題は、決して過去のことでも他人事でもない、現在も進行している我が国の喫緊の国民的課題であります。
 最後に、福岡市は、北朝鮮当局による拉致問題に対して、どのような認識をお持ちなのか、高島市長にお伺いして、私の質問を終わります。


◯市長(高島宗一郎) 北朝鮮当局による拉致問題につきましては、我が国の主権及び国民の生命と安全にかかわる重大な人権侵害であると認識をしております。
 先日、北朝鮮が拉致被害者や特定失踪者の方々について再調査を約束したとの報道もありますように、拉致問題は大きな転換期を迎えておりまして、私といたしましても、被害者の方々が御家族のもとに一日も早く戻られることを期待しております。
 福岡市におきましては、拉致問題の早期解決に向けて北朝鮮人権法に基づき、国や県と連携をしながら引き続きしっかりと取り組んでまいります。以上です。