笠 議員の質問と答弁

◯47番(笠 康雄)登壇 私は、みらい福岡市議団を代表し、市税収入の向上と雇用促進について、土砂災害警戒区域の指定に伴う住民への影響について、以上2点について質問いたします。
 まず、市税収入の向上と雇用促進に向けた取り組みについてお尋ねします。
 日本政府は、アベノミクスという経済政策により、日本経済を再生軌道に乗せようとしています。ところが、平成27年11月に内閣府が発表した7月〜9月期のGDP速報値は、前期比0.2%減となり、2期連続のマイナス成長でありました。また、平成27年10月に発足した第3次安倍政権の基本方針においては、平成32年ごろまでにGDP600兆円の目標を掲げております。これらの政策により、プライマリーバランスの黒字化に向けた経済財政運営を進めていることは評価いたしますが、私は、まだまだ我が国の財政健全化の道のりは非常に厳しいのではないかと危惧しております。
 一方、福岡市では現在、行財政改革を進めており、歳出の見直しとあわせて歳入の向上、とりわけ市税収入の向上にしっかりと取り組まなくてはならないと考えます。そのためには、行政が経済を牽引し、正社員の雇用をふやし、企業が設備投資できるような施策を展開し、将来に希望を与えることが必要ではないでしょうか。
 そこで、国の経済財政運営が厳しい状況の中、福岡市はどのようにして長期的な税収向上を図っていこうと考えているのか、お尋ねいたします。
 以上で1問目を終わり、2問目以降は自席にて行います。


◯財政局長(赤岩弘智) 長期的な税収向上に向けましては、多くの市民の皆様とともに策定いたしました福岡市総合計画の推進に当たり、福岡市の住みやすさに磨きをかけて市民生活の質を高め、質の高い生活が人と経済活動を呼び込み、都市の成長と税収の向上をもたらし、この都市の活力によりさらに生活の質が高まるという好循環をつくっていきたいと考えております。今後、このような都市の成長と生活の質の向上の好循環をより確かなものとし、さらなる税収向上を図ってまいりたいと考えております。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) 都市の成長と生活の質の向上の好循環によって市税を増収させるという考え方には賛同しますが、税収向上には、もう一つ重要なことがあります。それは、市民や企業に快く納税してもらえる環境を整備することです。政策の推進によって税源を確保できたとしても、それが税収に結びつかなければなりません。そのためには、市税の収入未済額を可能な限り減らし、きちんと納税した人が損はしない、そういうことを市民に示していく必要があります。
 そこで、近年の市税収入未済額の縮減に向けた取り組みと成果についてお尋ねします。


◯財政局長(赤岩弘智) 市税収入未済額縮減に向けた主な取り組みにつきましては、平成22年度に副市長をトップとする福岡市市税収入向上対策本部を立ち上げるとともに、年末、年度末の休日等における一斉催告や、不動産、動産の公売などに取り組んでおります。さらに、納税者の利便性向上や納期内納付の推進を図るため、口座振替の加入推奨やスマートフォン等から市税を納付できるモバイルレジの利用促進などにも取り組んでいるところでございます。そして、平成26年度決算における市税収入未済額は約58億3,100万円となり、ピーク時の平成14年度の半分を下回る水準に減少しております。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) 超高齢化社会が間近に迫る中、生産年齢人口は減少し、社会保障の財政負担がさらに増加していくことは目に見えています。そこで、将来の福岡市を支える子どもたちへの納税意識の啓発が特に重要になってきます。私は、子どもたちに働くことの大切さや労働から得られる税収が社会を支えているということを正しく理解させることが何よりも大切であると考えます。
 そこで、子どもたちに対する税の役割や意義の理解を促す取り組みについてお尋ねします。


◯財政局長(赤岩弘智) 福岡市におきましては、次代を担う子どもたちが租税について正しい知識を習得できるよう、国や県などとも連携して租税教育を推進しております。具体的には、国や地方公共団体の財政を支える租税の意義や役割等についての理解を促す租税教室の開催などの活動を積極的に進めているところでございます。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) 将来の福岡市を支える子どもたちに勤労と納税の重要性を理解してもらえるよう、しっかりと租税教育を進めてもらいたいと思います。
 さて、ここからは雇用促進について聞いていきたいと思います。
 なぜ雇用促進が大事か。それは、安定的な雇用の確保は社会保障費の抑制や税収の向上につながるなど、行政の財政健全化にも大きく貢献するものであると考えるからであります。
 そこで、全国的な雇用状況を見ていくと、求人数の増加や有効求人倍率の改善などアベノミクスの成果が見られる一方で、非正規雇用の労働者数が増加傾向を続けています。全国の雇用者に占める非正規雇用労働者の割合は、総務省の労働力調査で見ると、平成7年の21%に対し、平成26年は38%と上がり続けています。企業が非正規雇用を進める背景には、賃金の節約や仕事量の変化への対応、そして、即戦力となる人材の確保などさまざまな理由があると思います。また、非正規雇用で働いている人には、家計の補助を目的としたパートタイム労働や専門性を生かして働きたい派遣労働など、個々人にとって都合のいい働き方を選択している人もいます。ただ、個々の企業や労働者の視点で非正規雇用が合理的であっても、日本経済というマクロ的視点で見れば、必ずしも望ましい形態とは限りません。非正規雇用の増加によって人々の生活や将来への不安が増大し、消費活動の停滞やデフレを生み、それにより経済が停滞するとすれば、さらなる非正規雇用の増大を招くという悪循環に陥るという指摘もあります。そうした非正規雇用者が正社員として安定した雇用条件で働くことができれば、社会保障制度の支え手を確保するとともに、社会保障に係る将来の財政負担の軽減にも寄与することになると思います。
 そこで、多様化する就業形態の実態と福岡市が就職支援に特に力を入れている就業形態についてお尋ねします。


◯経済観光文化局長(重光知明) まず、就業形態の多様化の実態につきましては、厚生労働省の平成26年就業形態の多様化に関する総合実態調査によりますと、全国値で正社員が60.0%、正社員以外が40.0%となっており、この正社員以外の内訳につきましては、多い順にパートタイム労働者が23.2%、契約社員が3.5%、嘱託社員が2.7%、派遣労働者が2.6%、臨時労働者が1.7%、出向社員が1.2%などとなっております。
 次に、福岡市が就職支援に特に力を入れている就業形態についてでございますが、正規雇用につきましては、一般的に雇用や収入が安定しておりますことから、特に正規雇用を希望する方々につきましては、できる限り正社員として就職できるよう支援に努めているところでございます。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) 正規雇用は、雇用や収入が安定しているとのことですが、正社員とパートタイム労働者などの正社員以外では、賃金や勤続年数にどのような違いがあるのか、お尋ねします。


◯経済観光文化局長(重光知明) 正社員と正社員以外の賃金、勤続年数の違いについてでございますが、厚生労働省の平成26年賃金構造基本統計調査によりますと、平成26年6月の全国平均で正社員は賃金月額が31万7,700円、勤続年数が13.0年、正社員以外は賃金月額が20万300円、勤続年数が7.5年となっております。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) 福岡市内の15歳から29歳の若者は、人口に占める割合が政令市中1位となっており、特に若者の正社員就職を促進することが重要であります。私は、次代を担う若い世代が安定した雇用につくことがこれからの福岡市の活力の維持向上に大きく寄与するものと考えます。
 そこで、若者自身の会社の選択理由や就労意識はどのような傾向となっているのか、お尋ねします。


◯経済観光文化局長(重光知明) 若者の会社の選択理由や就労意識の傾向についてでございますが、公益財団法人日本生産性本部と一般社団法人日本経済青年協議会が平成27年度に行った新入社員働くことの意識調査によりますと、まず、会社を選ぶときにどういう要因を最も重視したかとの質問に対し、回答が多かった上位3項目につきましては、1位が自分の能力、個性を生かせるからで30.9%、2位が仕事がおもしろいからで19.2%、3位が技術が覚えられるで12.3%となっております。また、仕事についての考え方や希望についての質問に対し、そう思う、あるいはややそう思うといった肯定的な回答が多かった上位3項目につきましては、まず、1位が仕事を通じて人間関係を広げていきたいで94.8%、2位が社会や人から感謝される仕事がしたいで93.3%、3位がどこでも通用する専門技術を身につけたいで92.3%となっております。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) 新規学卒者にとって希望する仕事につけること、自分に合う会社に出会えることが大事だということがうかがえますが、福岡市では新規学卒者を初め、求職者の就職、特に正社員就職を支援するため、どのような施策を実施しているのか、お尋ねします。


◯経済観光文化局長(重光知明) 新規学卒者を対象としました就職支援施策につきましては、地元企業が参加する合同会社説明会の開催や、地元企業の魅力、採用情報等をインターネットで発信します地元企業情報発信事業などを実施いたしております。これらにつきましては、企業が正社員求人を行うことを参加条件といたしております。
 また、新規学卒者以外の求職者を対象とした就職支援施策につきましては、各区に設置しております就労相談窓口において就職相談を受けるとともに、求職者の希望や経歴等を踏まえて求人企業を開拓して紹介するなど寄り添い型の支援を行っているところでございます。特に正規雇用を希望する方々につきましては、できる限り正社員として就職できるよう求職者の経歴等を踏まえて正社員の求人企業の開拓に努めますとともに、中高年の求職者の雇用促進を図るため、正規雇用を行った企業に奨励金を交付する中高年雇用促進事業などを実施しているところでございます。
 また、正規雇用の開拓に当たりましては、非正規雇用労働者の正規雇用転換等を行う企業に交付されますキャリアアップ助成金など国の助成制度につきましても周知に努めているところでございます。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) 引き続きしっかり取り組んでいただきたいと思います。
 さて、正社員就職の支援とともに雇用の受け皿となる地元企業の人材ニーズに応えるためには、求職者のスキルアップがとても大切だと思います。
 そこで、現在、求職者の就職に役立つ能力を伸ばすために、国や県、福岡市はどのような事業を実施しているのか、お尋ねします。


◯経済観光文化局長(重光知明) 就職に役立つ能力を伸ばすための国や県、福岡市の事業についてでございますが、職業能力の開発、向上につきましては、職業能力開発促進法において国や都道府県の責務とされているところであり、福岡労働局や福岡県において県内の求人ニーズ等を踏まえ、ものづくり、理容、美容、医療事務など幅広い分野における公共職業訓練や、雇用保険を受給できない求職者が給付金を受給しながら受講できる求職者支援訓練などが実施されております。
 また、福岡市におきましては、正社員就職を希望するフリーターなどの若者を対象にウエブデザインなどの講座を開設し、就業体験などを通して就職を支援するデジタルコンテンツクリエーター育成事業を実施しますほか、福岡地区職業訓練協会との共催でビジネスパソコン、商業簿記、介護福祉士などの各種講習を実施いたしております。このほか、国や県などの関係機関が行う職業訓練につきまして、区役所等の窓口でのチラシの配布や、市政だより、市のホームページへの掲載など市民の皆様への周知、広報に努めているところでございます。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) 引き続き、求職者がスキルアップできるよう、その能力開発にもしっかり取り組んでほしいと思います。
 他方、求職者がどんなに頑張っても、その受け皿がないと就職することはできません。となると、正規雇用の場をふやすことも重要です。その雇用の場となる企業のうち、市税を納めているのは地場企業です。経済とはお金の流れであり、その中で、市内でお金が回り続けることが大変大事なのであります。市の税収を増加させるため、それに貢献できる企業を優遇する、そういう視点も重要ではないかと私は思います。
 そこで、行政が発注する工事等において、福岡市に税金を納める地場企業を優遇するような施策を積極的に行うべきと考えますが、現在の取り組み状況についてお尋ねします。


◯財政局長(赤岩弘智) 公共工事の発注に当たりましては、従来より地場企業の育成、振興を図る立場から、地場企業への優先発注を基本方針とし、一般競争入札におきましては、法令等を踏まえつつ、原則として入札参加資格に地場要件を設定しているところでございます。また、発注形態を建設工事共同企業体とする場合は、原則として共同企業体の構成員の全部または一部を地場企業とすることとしております。さらに業者登録に際し、工事の等級格付において地場企業に対する加点措置を講じております。加えまして、総合評価方式におきましても、地場企業のみが加点対象となる企業評価項目を設定するなどしているところでございます。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) 地場を優先していることはわかりました。
 そこで、地域社会に貢献している地場の優良企業を公共工事の発注において、さらに優遇していくことが必要だと考えますが、そのような観点で現在どのような制度があるのか、お示しください。


◯財政局長(赤岩弘智) 福岡市におきましては、地場企業による福岡市や地域社会への貢献活動の促進等を目的として、社会貢献優良企業優遇制度を導入しております。優遇の具体的な内容につきましては、指名競争入札における指名回数の優遇、制限つき一般競争入札における入札参加資格要件となる施工実績の基準の緩和、総合評価方式における企業評価項目での加点などとなっております。なお、現在は保健福祉局所管の障がい者雇用促進事業、環境局所管の環境配慮型事業、市民局所管の次世代育成・男女共同参画支援事業の3事業について社会貢献優良企業を認定しているところでございます。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) 障がい者雇用や環境配慮などは社会的に重要な視点であり、これらの取り組みは大変評価しております。これらに加えて、正規雇用を促進している企業についても、公共工事の発注において優遇すべきであると考えますが、所見をお尋ねします。


◯経済観光文化局長(重光知明) 御提案の公共工事の発注における正規雇用を促進している企業、積極的な企業の優遇制度につきましては、地域の正規雇用を促進する手法の一つとして、一定の効果が期待できると考えております。したがいまして、今後、他都市の事例なども参考にしながら、関係局と協議し、検討してまいります。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) これまで福岡市は、高島市長のリーダーシップを初めとする行政努力により、また、国の経済政策とも相まって、本市の経済は活気を取り戻しつつあると思います。中でも雇用情勢の指標の一つである有効求人倍率は、福岡地区では、昨年10月は1.09倍、ことし10月は1.32倍と大きく改善しています。
 雇用情勢が改善した今、新たな課題は雇用の質の向上です。ぜひ、福岡市として正社員就職の支援や正規雇用がふえるような取り組みにさらに力を入れていただきたいと考えますが、最後に市長のお考えをお伺いし、この件についての質問は終わります。

◯市長(高島宗一郎) 福岡市におきましては、生活の質の向上と都市の成長の好循環、これを基本戦略として掲げまして、地域経済の活性化に向けて、中小企業の振興や創業支援、そして、観光・MICEの振興、さらに企業誘致などに取り組んでまいりました。こうした結果、平成22年度から26年度にかけての市税収入の伸び率は6.3%と政令市で1位となりますとともに、福岡地区の有効求人倍率は大きく伸びて、また、福岡市内の平成26年の従業者数は平成24年から4.3%、およそ3万6,000人も増加するなど雇用情勢は大きく改善をして、市民の生活の質の向上にも寄与しているものと考えております。
 今後、都市の成長をさらなる生活の質の向上につなげて持続させていくためには、笠議員御指摘のとおり、雇用の質の向上、特に求職者の希望や経歴などに応じた正規雇用の増加を図っていくことが重要であるというふうに認識をしております。このため、御提案いただきました正規雇用に積極的な地場企業への優遇制度の検討を含めて、国や県とも連携をしながら、正規雇用の促進や正社員就職の支援にしっかりと取り組んでまいります。以上です。


◯47番(笠 康雄) 次に、土砂災害警戒区域の指定に伴う住民への影響についてお尋ねします。
 本市では、平成25年度に福岡県が市内全域で土砂災害防止法に基づき、土砂災害警戒区域並びに土砂災害特別警戒区域の指定を行っています。ある日突然、降って湧いたような土砂災害警戒区域の指定は、住民の皆さんにとってさまざまな不安要素となっています。
 まず、いつ起きるかわからない土砂災害への漠然とした不安です。土砂災害警戒区域内の住民の皆さんは、いざ災害が発生したときにどのような避難行動をとればよいのか、十分に理解できているのでしょうか。土砂災害警戒区域内であっても、住宅の状況によっては屋外避難せず、自宅内の安全な場所に身を置いていれば難を逃れることが可能な場合もあると考えます。個々人の状況に応じたきめ細やかな対応が必要です。
 また、今回の指定に当たり、特に土砂災害特別警戒区域、いわゆるレッドゾーンに指定された場所では、住宅を建てかえる場合、土砂災害時に想定される土石等の力に対して安全な構造にする必要があるため、普通に建てるよりも多額の費用負担が発生します。特に土砂災害特別警戒区域に指定された地域は市街化調整区域が多いようですが、建物の建築に制約がある市街化調整区域では、住居を近隣に移転するにしても簡単な話ではありません。このように、土砂災害特別警戒区域内の住民の皆さんにとっては、生活にさまざまな影響が出てくるわけであります。そこで、この土砂災害特別警戒区域内に居住する住民に対して、公的支援や税制面での配慮、建築規制の緩和などが必要ではないかと考えます。
 そこで、まずは土砂災害防止法の制定の経緯並びに警戒区域と特別警戒区域の違いについてお尋ねします。


◯市民局長(井上るみ) 土砂災害防止法につきましては、平成11年6月に広島市、呉市を中心とした集中豪雨により土砂災害が発生し、死者31名という甚大な被害が発生しましたことを契機に、土砂災害から国民の生命及び身体を保護するため、土砂災害が発生するおそれがある土地の区域を明らかにすることなどを目的として、13年4月1日から施行されております。
 また、土砂災害警戒区域とは土砂災害のおそれがある区域であり、土砂災害特別警戒区域とは土砂災害警戒区域の中で建物の損壊など大きな被害が生じるおそれがある区域のことでございます。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) 次に、本市における各区ごとの土砂災害特別警戒区域の住宅戸数についてお尋ねします。


◯市民局長(井上るみ) 各区ごとの土砂災害特別警戒区域内の住宅戸数につきましては、平成25年10月から27年5月にかけて福岡県が区域の告示を行ったものでお答えいたしますと、東区が1,169戸、博多区51戸、中央区718戸、南区305戸、城南区124戸、早良区996戸、西区914戸の合計4,277戸でございます。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) また、過去、市内において人命にかかわるような土砂災害があれば、その内容についてお尋ねします。


◯市民局長(井上るみ) 人命にかかわる土砂災害の発生状況につきましては、昭和38年6月に梅雨前線の北上に伴う集中豪雨により、旧早良郡早良町において死者3名、被災家屋768戸という大規模な土石流が発生しております。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) まず、災害発生時の住民のとるべき避難行動についてです。
 市は、土砂災害警戒区域及び特別警戒区域内の住民に対して、ハザードマップの配布や出前講座などで周知を図っていると聞いていますが、まだまだ住民の理解は不十分なようです。災害発生時において、住民が適時、的確な避難行動がとれるよう、もっと具体的かつ実践的な対応が必要だと考えますが、本件について当局のお考えをお尋ねします。


◯市民局長(井上るみ) 災害時の対応につきましては、市民一人一人がみずからの判断により主体的に避難行動がとれるようわかりやすく避難情報を発信することや、平常時において知識と情報を提供していくことが重要であると考えております。平成27年度からは、土砂災害の専門家を地域に招いて、ハザードマップを活用し、住民参加型のワークショップの開催や、実際の危険箇所や避難経路を確認するフィールドワークを実施するなど、より実践的な対応が行われるような取り組みを進めております。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) 避難行動については、平成27年度から新規事業を実施されているようですが、そもそも避難場所は大丈夫なのでしょうか。市は、平成26年度に避難場所の適合性調査を行われていますが、本市の中で土砂災害の避難場所として不適合なところは何カ所あったのか、お尋ねします。


◯市民局長(井上るみ) 平成26年度に公民館や小中学校の体育館など計425カ所の避難場所の適合性調査を実施し、平成27年3月に結果を取りまとめたところでございます。その結果、土砂災害に適さない避難場所が8カ所でございました。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) 調査の結果、不適合な避難場所が8カ所あるということですが、市としていかなる対応を考えてあるのか、お尋ねします。


◯市民局長(井上るみ) 今回の調査の結果、土砂災害に適さないと判明した避難場所につきましては、土砂災害の避難場所としての指定は行わず、土砂災害発生時には同じ校区内にある安全な指定避難場所へ誘導することといたしております。また、平成27年7月に土砂災害に適さない避難場所を明示したハザードマップを土砂災害警戒区域の皆様に配布いたしております。さらに、平成27年度中に土砂災害の避難場所としての適否の表示を行いますとともに、しっかりと区役所と連携し、周知を図ってまいります。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) 土砂災害警戒区域及び特別警戒区域における避難のあり方については、よりきめ細かな対応を今後も検討されて、住民の不安を解消していただくよう要望しておきます。
 次に、土砂災害特別警戒区域、いわゆるレッドゾーンの指定に伴う住民への影響等について、幾つかお聞きいたします。
 土砂災害特別警戒区域に指定された土地で住宅を建築する場合、外壁などを鉄筋コンクリート構造にしたり、土砂の衝撃を遮る門や塀を設置するなどさまざまな対策工事が必要となり、通常の住宅建築と比較して数百万円単位で費用負担が増加することになります。これらの対策工事を個人で実施するには、経済的な負担が大きく、困難ではないかと懸念しています。
 そこで、対策工事に当たり、補助制度や融資制度などの公的支援、または行政が実施して土砂災害特別警戒区域を解除するなどの対応ができないのか、お尋ねします。


◯住宅都市局長(馬場 隆) 対策工事に対する公的支援につきましては、まず、個人や民間事業者が行う場合の補助制度は現在のところございません。融資制度につきましては、災害対策基本法に基づく危険宅地に対して市長の防災指導を受けたものについて、擁壁の設置などの宅地防災工事または復旧工事を行うために必要な資金の融資を行う宅地防災工事融資制度があり、活用ができる場合があります。行政による対策工事につきましては、現在福岡県が実施しており、土砂災害特別警戒区域において、地域からの要望に基づき、県が詳細調査を行った上で急傾斜地崩壊対策事業や砂防事業が実施され、土砂災害を防止するための必要な措置が講じられれば指定が解除されるものと考えられます。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) 今の答弁をお聞きすると、やはり個人の負担で工事を行うか、土砂災害特別警戒区域の指定がない安全な場所へ移転するしかないと思われます。自力で対策工事ができない方々は、安全な場所への移転を促進すべきと考えますが、その移転に対して補助制度など公的支援はないのか、お尋ねします。


◯住宅都市局長(馬場 隆) 移転に対する補助につきましては、土砂災害防止法により土砂災害特別警戒区域に存在する建築物について、福岡県知事による移転の勧告が行われた場合は、市は国の補助制度を活用し、移転費の補助を行うことができます。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) このように、土砂災害特別警戒区域の指定により、区域内で暮らす住民の皆さんにとっては住宅を建てるにも制約があり、引っ越しして売却するにも売りにくい、結果、資産として活用しにくい土地になっています。
 そこで、土砂災害特別警戒区域に指定された土地に対する固定資産税についても何らかの配慮が必要と考えますが、どのようになっているのか、お尋ねします。


◯財政局長(赤岩弘智) 福岡市におきましては、土砂災害特別警戒区域に指定された土地の固定資産評価額を当該土地の状況に応じて減額できることとしておりまして、例えば、崖地などにおきましては、固定資産評価額を最大で55%減額できる措置を講じているところでございます。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) レッドゾーンに指定された宅地を誰が買ってくれるでしょうか。土地の資産価値は、ほぼゼロになってしまうのが現実ではないでしょうか。固定資産税も実態に即した評価とすべきであると申し述べておきます。
 また、私が住んでいる西区においては、かなり広い範囲が市街化調整区域になっており、その中にも数多くの土砂災害特別警戒区域が指定されています。市街化調整区域においては、厳しい建築の制約があるため、近隣への移転も自由にならないと心配しておりますが、どういう条件ならば移転が可能なのか、お尋ねします。


◯住宅都市局長(馬場 隆) 建物の移転につきましては、市街化調整区域内において土砂災害特別警戒区域に存在する建築物については、土砂災害防止法第25条に基づき、福岡県知事により移転の勧告が行われた場合は市の条例により移転を可能としております。また、農業従事者においては、原則許可を受けずに建築が可能となり、また、市街化調整区域に区分された日以前から当該集落に住まわれている方の子どもなど、いわゆる分家につきましては、指定既存集落内やその集落の隣接地において建築が可能となる場合があります。しかしながら、このような条件に該当しても、近隣に移転の適地がないなどにより一部には移転が困難な場合もあると考えられます。以上でございます。


◯47番(笠 康雄) 住民の方々がみずから実施する対策工事には、今のところ補助制度もなく、移転に当たっての補助制度についても条件が大変厳しく、私は使いやすいものになっていないと考えます。また、固定資産税の減額補正についても、住民感覚とはかなりの差があり、今後も実情に合った制度になるよう検討することを要望しておきます。
 また、土砂災害警戒区域の指定に伴う住民への影響について、るる質問してまいりましたが、最後に関係住民へ高額な経済負担を強いる土砂災害特別警戒区域の指定について私の思いを述べて、この質問を締めくくりたいと思います。
 平成11年に広島市と呉市で発生した土砂災害の惨事を受けて土砂災害防止法が制定されたという法の趣旨は理解できますが、全国に52万カ所もあると言われている土砂災害の危険箇所を、地質調査も行わず、地形的な要件などで一くくりにして網をかけるというのは、いささか乱暴なやり方ではないかと思うところであります。
 土砂災害警戒区域は、土砂災害のおそれがある場所を関係住民に知らしめ、不測の災害に備えさせるという点で意味のあることだと思いますが、一方、いつ起きるのかという、これといった確証もない中で、住宅の新築時や建てかえ時に高額な経済負担を強いる土砂災害特別警戒区域の指定は、住民感情からいってもかなり乱暴な手法ではないでしょうか。
 先ほど当局からの答弁にもありましたように、過去、福岡市において人命にかかわるような土砂災害は数えるほどしか起こっていないという厳然とした事実があることからしても、なおさらのことだと思います。市長におかれましては、市街化調整区域の活性化については、本市の重要施策の一つとして強く取り組んでいただいていることに対し、高く評価しているところであります。しかしながら、一方で、国と県の定めによりこのように調整区域の活力を減少させるような深刻な問題が存在していることを御理解いただき、改めて市として何ができるのか、例えば、補助制度や融資制度等の公的支援、さらには市街化調整区域内の移転先の確保に向けて最大限の努力をしていただくことを強く要望し、私の質問を終わります。市長、よろしくお願いします。