笠 議員の質疑と答弁

◯笠委員 みらい福岡市議団を代表し、アートを生かしたまちづくりについて、ふるさと納税の現状とあり方について、以上2点について質問する。まず、アートを生かしたまちづくりについて質問する。福岡市美術館はことし9月からリニューアル工事に向け休館中であり、2年半に及ぶ休館を経て、平成30年3月に新たな美術館として生まれ変わるが、休館中に福岡市美術館はどのような取り組みを行うのか、あわせてアートを活用したまちづくり、地域活性化のあり方について幾つか質問していく。まず、福岡市美術館の27年度予算額、決算額及び観覧者数、28年度予算額及び観覧者数を尋ねる。

△経済観光文化局長 福岡市美術館の予算額については、主要な費目である美術館費で答弁する。27年度予算額は5億8,781万円、決算額は5億4,235万7,000円で、観覧者数は60万9,476人である。また、28年度の当初予算額は4億6,153万円、8月末までの観覧者数は18万6,656人である。

◯笠委員 福岡市美術館が今後、新しくどのような美術館としてリニューアルオープンするのかしっかりと市民に伝えていくことが必要と思うが、福岡市美術館はどのような美術館を目指しているのか、また、具体的にどのようなリニューアルを行うのか。

△経済観光文化局長 市美術館のリニューアル基本計画では、展示と教育普及の強化による美術と人をつなぐ美術館、全ての人に親しまれ、優しさが広がる美術館をコンセプトに、何度でも来たくなる、誰かを連れて来たくなる美術館となることを目指している。具体的なリニューアル内容としては、まず、つなぐ美術館として、1万5,000点を超える所蔵作品をできるだけ多く展示、鑑賞に供するため、常設展示のスペースを拡充するとともに、作品解説の多言語化を図っていく。また、広がる美術館として、来館者の利便性を向上させるため、施設をユニバーサルデザイン化し、アクセスの向上を図るため、大濠公園の園路側に新しいアプローチを設置する。あわせて、利便施設の魅力向上のため、新しいアプローチの部分にカフェを新設し、レストランやミュージアムショップの充実を図ることとしている。

◯笠委員 大濠公園から福岡市美術館へ上がる階段の途中に、今や世界的アーティストとなった草間彌生氏の印象的な作品「南瓜」がある。これは黄色地に黒の水玉模様のカボチャをモチーフとした作品である。制作者の草間彌生氏は、アメリカの雑誌「タイム」の発表した2016年版世界で最も影響力のある100人に、日本人でただ1人選出されている。87歳の年齢にもかかわらず、精力的に制作活動を続け、現代アートの第一人者として世界的にも有名である。有名な作品としては、瀬戸内国際芸術祭で有名な直島の「南瓜」のほか、長野県の松本市美術館や青森県の十和田美術館などの屋外作品がある。そのほか、草間氏の有名な水玉模様をモチーフに、ルイ・ヴィトンとコラボレーションするなど、女性に人気のバッグやドレスのデザインでも知られている。草間氏の作品は、福岡市健康づくりサポートセンター等複合施設あいれふにもあり、白地に赤の水玉模様の帽子、赤地に白の水玉模様の帽子、紫地に白の水玉模様の帽子から成る「三つの帽子」という作品が展示されている。「南瓜」も「三つの帽子」も草間彌生氏が有名になる前の作品であり、本市の美術品取得に対する先見の明はすばらしいと思う。市美術館については、美術作品に対する鑑識眼等があってしかるべきとは思うが、なぜあいれふにも草間彌生氏の作品があるのか。設置された経緯を尋ねる。

△保健福祉局長 あいれふ開館時には西側玄関前のスペースにキース・へリング氏の作品を設置していたが、南側スペースについては彫刻設置の方針だけが決まっており、どのような形で設置するか検討していた。その後、市民の方から美術作品を寄附したいという申し出を受けて専門家の意見を参考に検討した結果、今では日本を代表する現代芸術家となった草間氏にオリジナル作品の制作を依頼する方針を決め、平成8年10月に設置されたものである。

◯笠委員 福岡市内に著名なアーティストの屋外作品が2カ所もあるということは、非常にすばらしいことである。あいれふの作品は、当時1,000万円ぐらいだったものが、今では1億円を下らないと言われている。草間氏の作品を取り入れた当時の先見性は称賛される。これからも健康づくりサポートセンターのように大規模な公共施設については、都市の魅力として、建物だけではなく、シンボルとなる屋外作品の設置を含めて検討すべきである。今後、建てかえや整備が予定される拠点体育館や市民会館については、近隣に緑地や公園等もあり、作品の展示にはふさわしい環境にあるため、アートを生かした整備検討を大いに期待したい。福岡市健康づくりサポートセンターに設置された草間彌生氏の作品も、市民を初めとした多くの人に鑑賞され、知ってもらうに値するすばらしい作品である。そこで、この作品をリニューアルする市の美術館に移設し、美術館の作品とあわせて鑑賞できるようにしてはどうかと思うが、所見を尋ねる。

△保健福祉局長 あいれふの作品は、現在地に設置することを前提にして、草間氏が「歩く」をテーマにデザイン、制作したものであり、こうした経緯を踏まえると、これを改めて移設することには課題があると考えている。また、設置されて20年が過ぎ、多くの市民に愛され、また、あいれふのシンボルとしても定着しているため、今後も現在の形で作品を守り、市民への周知を図っていきたい。

◯笠委員 草間彌生氏の健康づくりサポートセンターの作品については、寄附による設置であり、来館者に愛されるシンボルであるということであれば、美術館への移設は難しいと思うが、PRの仕方一つで効果が格段に上がるのではないか。例えば市の美術館とあいれふにある2つの作品をセットで広報、周知を図り、より多くの人に鑑賞してもらい、本市の魅力として発信することは可能である。以前、1990年から2002年ごろまで民間が主導し、本市も協力して、ミュージアム・シティ・プロジェクトというアートプロジェクトが行われていた。これは、商業施設の出店が目覚ましい天神地区から始まり、10年の間に姪浜や能古島のような郊外や、歴史と伝統にあふれる博多部などでも展開され、このアートプロジェクトにより当時福岡の名が全国的に知られた。またその際、能古島の別荘にコスモスを飾った草間彌生氏の作品が公開されている。このように、本市は世界的なアーティストの作品を時機を逃さず収集しているだけでなく、当時のアートシーンを盛り上げ、最先端のアートプロジェクトとしてミュージアム・シティ・プロジェクトを実施してきたという歴史があるため、この福岡の優位性を生かし、精力的に文化芸術振興に向けた取り組みがなされるべきである。特に、市の美術館はこの先2年半も休館するため、リニューアルオープンまでの取り組みが非常に重要である。そこで、草間彌生氏の作品も含め、美術館の所蔵品を休館中どのように活用するのか、また、どのような館外活動を行うのか尋ねる。

△経済観光文化局長 美術館所蔵品のうち、黒田家関係の美術品については博物館において、アジア系作家の近代的な美術品についてはアジア美術館において、その一部を展示することとしている。また、美術館を広く知ってもらい、より多くの人にリニューアル後の美術館に来てもらうため、美術館の作品の一部を活用して、九州内を初め各地で巡回展を行うこととしている。休館中の館外活動については、学芸員が学校や地域に出向き講座を行うどこでも美術館事業を実施し、子どもたちなどに対し絵画や屏風などの所蔵品のレプリカなどを通じて直接美術に触れ、親しむ機会を提供していくこととしている。なお、草間彌生氏の屋外作品「南瓜」については、塗装の剥離やひび割れなどの補修をすることとしているが、休館中の館外展示についても今後検討していく。

◯笠委員 先日、瀬戸内国際芸術祭2016に行ってきた。平成22年に第1回が開催され、今回が第3回目の開催となる瀬戸内国際芸術祭2016は、春、夏、秋の3シーズンで瀬戸内海に浮かぶ12の島と2つの港を会場にアートプロジェクトイベントが展開されている。この全国的にも有名な瀬戸内国際芸術祭について、来場者の人数を把握しているか。

△経済観光文化局長 瀬戸内国際芸術祭の報告書によると、各会場の来場者数の合計は平成22年開催の第1回で93万8,246人、平成25年開催の第2回で107万368人とされている。

◯笠委員 来場者数の合計は、同じ人が別の場所で何回も計上されており、実数ではないと思うが、これだけの観覧者を集めたということは、それなりの理由があると思う。この芸術祭は、あるものを生かし、新しい価値を生み出すという方針のもと、現代アートを通して島の生活や文化、歴史などを浮き彫りにすることを目指している。会場の一つである直島では、空き家となった古民家を利用し、安藤忠雄氏など著名な建築家が古民家の改修、改造を担当し、宮島達男氏などの現代の芸術家が家の空間そのものを現代美術作品に変えた家プロジェクトが実施され、7軒の家屋や寺社などが作品として展示されていた。そのうちの1軒の作品名は「はいしゃ」というが、この建物は以前、歯科だったそうである。最初はこれが何で芸術なのかと思ったが、帰るころには何となくわかるような気がしてくるから不思議なものである。これは廃屋を美術館に変えたものだが、こうした取り組みは空き家が数多くある市街化調整区域にはぴったりだと思う。瀬戸内国際芸術祭にはたくさんの人々が作品を見に来ており、ボランティアの人たちがアート作品の説明を行っていた。外国人も非常に多く、説明は英語でも行われており、アートとまちづくりが効果的に融合した地域参加型の先駆的な文化芸術のフェスティバルだと感心した。本市においても、このようなアートを切り口に、例えば博多湾や玄界灘全体を美術館に見立てた取り組みを進めていけば観光客を呼び込むことができ、能古島、玄海島、志賀島、北崎などの雇用創出や定住化、経済振興など、市街化調整区域の活性化にもつながると考えられる。そこで、この瀬戸内国際芸術祭においては、どのような経済効果が生まれているのか、本市が把握している内容を尋ねる。

△経済観光文化局長 瀬戸内国際芸術祭2013の報告書によると、香川県内における経済波及効果は132億円と推定されている。会場となった島々では、グッズ等の土産物の商品展開がなされ、飲食店も増加しており、関係商業者へのアンケートの結果では、宿泊事業者の75%、飲食業及び商店街関係者の80%が芸術祭開催の効果があったと回答している。また、レンタサイクル、レンタカー、シャトルバスなどの島内の交通手段が増強され、新たなパッケージツアーも多数組まれたことなどにより、会場の島々への航路利用者数も前年と比較して約1.4倍に増加したとのことである。

◯笠委員 直島では、草間氏の2つの作品を最大限に活用し、お土産などのグッズが数多く販売されるなど作品が商品展開にうまく結びつけられており、観光客にも好評で、水玉模様のコーヒーカップ、キーホルダーなどがたくさん売れていた。また、島に渡る渡船も水玉模様と徹底されており、乗客は下船したら船着き場の奥にある「南瓜」を見に行き、帰りも時間があれば見に行くことができる。また、待ち合いの時間があれば、その間グッズを買うこともできるなど、お金がそこに落ちるようになっており、大変感心した。瀬戸内海の島々に比較すると、本市は都市の人口規模も大きく、まちが内包している美術作品などの魅力資源ははるかに豊かであると感じている。本市が一丸となって協力し、同様の取り組みを行えば、地域活性化や産業活性化も含め、瀬戸内国際芸術祭を上回る効果が期待できるのではないか。特に、能古島の営業を中止している旅館などの建物を利用して、仮設の展示施設などを設置すれば、渡船や旅館、飲食店などの産業や地域が確実に活性化すると考えられる。そこで、文化芸術振興の観点、また市街化調整区域の活性化の観点から、瀬戸内国際芸術祭やミュージアム・シティ・プロジェクトのような取り組みをどのように評価するか所見を尋ねる。

△経済観光文化局長 瀬戸内国際芸術祭のような取り組みの評価について、文化芸術振興の観点から答弁する。瀬戸内国際芸術祭では、瀬戸内海の島々のすばらしい自然環境を舞台として、著名な作家の手による多数の現代アートの作品を島の生活や文化に溶け込む形で配置し、アートに出会える旅を来訪者が楽しく体験できる演出が効果的になされている。また、この芸術祭は、会場の一つとなっているミュージアム施設を開館した民間企業が長年にわたって行ってきた現在アートを活用した文化振興や地域活性化の取り組みから始まり、地域の方々や関係者を巻き込んで発展したものである。文化振興政策としては大変ユニークな取り組みであり、文化芸術に親しむ人々の裾野を大きく広げた民間主導による文化振興の成功例として高く評価できるものと考えている。また、本市で開催されていたミュージアム・シティ・プロジェクトも、同じく熱意ある民間の人々が主体となり、まち全体をミュージアムとして捉えた大変ユニークな取り組みであり、今後の文化振興を考えていく上で再評価し、参考にしていかなければならないと考えている。

△総務企画局長 市街化調整区域の活性化の観点から答弁する。瀬戸内国際芸術祭の取り組みは、132億円の経済波及効果が認められるとともに、宿泊事業者や飲食業関係者の多くが開催の効果があったと回答しており、観光業の振興を初めとした地域活性化に寄与しているものと認識している。本市においても、市街化調整区域の豊かな自然環境や美しい景観、歴史・文化資源など、都心部とは違う魅力を生かして多くの人々に訪れてもらうことは、地域の活性化に向けて重要と考えている。

◯笠委員 瀬戸内国際芸術祭の成功には、長年にわたり瀬戸内地域に美術館等の整備などを行ってきた民間企業ベネッセの存在も大きい。また、ミュージアム・シティ・プロジェクトにおいても、推進に尽力した民間の人々がいた。今日、本市の企業で寄附のできる余裕があるところは余りないと思われるが、本市でも九州大学の椎木講堂に何億円という多額の寄附をした人もおり、ふるさと納税としての寄附のPRやクラウドファンディングの活用など、うまく工夫すれば、資金調達の面で市の税金に依存しない方法もあると考える。今後、資金面も含めしっかりと研究し、ぜひ本市でも実現できればと思っている。ミュージアム・シティ・プロジェクトから約20年近くが経過しようとしており、また、今まさに美術館がリニューアルとなるタイミングとなっており、この機を逃さず、福岡の活性化のためにも、このようなアートを利用した施策をぜひ進めてもらいたい。草間彌生氏の屋外作品を最初に採用したのは本市であり、しかも2カ所もあるのは本市だけであり、もっと誇りを持ってPRすべきである。瀬戸内であれだけのことができるのであれば博多湾だけでなく玄界灘、さらには釜山まで巻き込むような国際芸術祭にしてもよいし、草間作品を保有し、歴史もある福岡であれば実現できる可能性はあると考えている。国のほうでも、近年各地で盛り上がりを見せる現代アートなどを生かしたまちづくりに注目しており、29年度の文化庁の概算要求では、自治体が産学民間芸術団体と連携して地域振興につながる取り組みを支援する先進的文化芸術創造拠点形成事業に15億円を新規計上している。このように国もこうした取り組みを応援しており、本市においてもアートを活用したプロジェクトを積極的に実施し、本市の文化振興及び地域活性化につながる取り組みを行うことが必要と思うが、所見を尋ね、この質問を終わる。

△貞刈副市長 文化芸術は心豊かな生活の礎となり、人間性や創造力、感性を育むとともに、都市の魅力や個性を形成し、まちのにぎわいの創出につながることで経済の活性化にも大きな効果があると考えている。瀬戸内国際芸術祭に代表されるアートを活用したプロジェクトは、市民や企業が主体的、先導的に取り組んでいるものであり、文化芸術の振興のみならず、観光集客を初めとする地域の活性にもつながる大変効果的な取り組みの一つであると考えている。国は2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据え、日本の芸術、歴史、伝統などを生かした文化プログラムを全国で展開する方針を打ち出しており、本市としては、この機会を捉え、市民や企業の協力を得ながら、文化芸術の振興にとどまらず、地域の活性化にも効果のある文化プログラムの実施について検討していくこととしており、その中でアートを活用したプロジェクトについても検討していく。

◯笠委員 次に、ふるさと納税の現状とあり方について質問していく。ふるさと納税制度については、本市でもさまざまな事業において取り組まれていると承知しているが、昨今、テレビや新聞等でも大きく取り上げられているとおり、寄附者へ豪華な返礼品を送る自治体に多額の寄附が集まるとともに、熊本地震や台風10号などにより大きな損害を受けた被災地へもふるさと納税制度を活用して、全国から多くの寄附が集まっているこのような状況の中、本市が寄附を集めるのは厳しい状況にあるが、先ほどの質問で尋ねた瀬戸内国際芸術祭やミュージアム・シティ・プロジェクトのようなアートプロジェクトなど、文化芸術の振興という新たな視点からの有効活用や、新たな手法の活用による、寄附者からの賛同を得やすい仕組みづくりを検討すべきと考えている。そこで、まず現状について確認するが、全国のふるさと納税の過去3年間の実績を尋ねる。

△財政局長 全国のふるさと納税の受入額は、国の公表資料によると、25年度は約146億円、26年度は約389億円、27年度は約1,653億円となっている。

◯笠委員 全国の寄附額は、直近の27年度は前年度比で約4倍と大幅に増加している。増加の要因についてはどのように考えているのか。

△財政局長 27年度の全国的なふるさと納税受入額の増加の要因は、平成27年から個人住民税のふるさと納税に係る特例控除額の上限が所得割額の1割から2割に拡充されたこと、また、一定の要件のもとで寄附金税額控除を受ける際に、確定申告が不要となるふるさと納税ワンストップ特例制度が創設されたことなどによるものと考えている。

◯笠委員 国においても、制度を改正し、ふるさと納税がより活用しやすくなっているが、ふるさと納税制度が導入された背景、目的とその概要について尋ねる。

△財政局長 ふるさと納税制度は、自分の生まれ故郷はもとより、お世話になった地域やこれから応援したい地域の力になりたいという思いを実現し、ふるさとへ貢献するための制度であり、平成20年に開始されたものである。寄附者にとっては、寄附という手法で自分の意志によって寄附先を選択できるというメリットがあり、国においても、寄附先を選択する制度であり、選択するからこそその使われ方を考えるきっかけとなる制度であるとしている。ふるさと納税制度による都道府県市区町村への寄附により、その寄附額のうち2,000円を超える部分について、一定の上限まで原則として所得税と住民税から全額が控除される。

◯笠委員 市民が、自分が応援したい自治体、共感する政策や事業を選択し、寄附という形でその気持ちをあらわすというのがふるさと納税の本来の姿と考えるが、昨今の報道等を見ると、返礼品として高価なバイクや電化製品などを送る自治体もあり、返礼品の競争で寄附者を奪い合っているように見受けられる。この現状について、国はどのように捉えているのか尋ねる。

△財政局長 国は、ふるさと納税は経済的利益の無償の供与である寄附金を活用して豊かな地域社会の形成及び住民の福祉の増進を推進することにつき、通常の寄附金控除に加えて特例控除が適用される仕組みであることを踏まえ、金銭類似性の高い返礼品や資産性の高い返礼品、高額または寄附額に対し返礼割合の高い返礼品など、ふるさと納税の趣旨に反するような返礼品の送付を行わないよう求めている。

◯笠委員 ここからは本市のふるさと納税に向けた取り組みについて尋ねていく。本市においては、ふくおか応援寄付という形で取り組んでいるが、直近3年間の実績を尋ねる。

△財政局長 ふくおか応援寄付の受入額は、25年度は約1億2,649万円で、うち個人分は約3,400万円、26年度は約8,003万円で、うち個人分は約3,781万円、27年度は約7,337万円で、うち個人分は約4,688万円となっている。

◯笠委員 ふるさと納税制度は、寄附額が一定の上限まで居住地の住民税から控除される仕組みであり、人口の多い大都市においては、住民税からの控除による減収の影響も大きいと報道されている。ふるさと納税による本市の市税への影響額はどうなっているのか。

△財政局長 本市の28年度課税におけるふるさと納税に係る寄附金税額控除額は、約8億5,000万円となっている。

◯笠委員 ふるさと納税による、本市の市税への影響額の大きさがよくわかった。ふくおか応援寄付については、寄附の募集のリーフレットが作成されており、福祉・子育て・健康、森づくり・まちづくり、環境、美術館・図書館、スポーツなど、幅広く現在16の事業や区分で寄附を受け付けている。そこで、25年度から27年度の各年度で寄附額が大きい上位3事業を尋ねる。

△財政局長 ふくおか応援寄付の受入額の多い順に、25年度はこども病院の入院患児等の家族の滞在施設であるふくおかハウスの建設に約1億576万円、こども未来基金に約483万円、NPO活動支援に約369万円となっており、26年度は、ふくおかハウスの建設に約4,576万円、こども未来資金に約848万円、福岡城整備基金に約823万円となっており、27年度は、環境市民ファンドに約1,849万円、本市の施策全般に約1,791万円、NPO活動支援に約950万円となっている。

◯笠委員 こども病院の患者家族滞在施設であるふくおかハウスの建設は、多くの人から賛同された事業だったことがよくわかるが、ふくおかハウスは27年度に完成し、26年度までで寄附の受け付けは終了している。そこで現在は福岡城整備基金に力を入れているようだが、今は大変間が悪く、熊本城の被災現場の状況がテレビ等で放映されるたびに、多くの日本人の心は熊本のほうに向いてしまう。そこで、新たにふくおか応援寄付に、広く応援してもらえるような事業を打ち出していく必要があると考えるが、所見を尋ねる。

△財政局長 ふくおか応援寄付については、これまでも寄附金の使い道に共感を得ることに重点を置いて取り組んできているが、各局とも連携しながら、より共感や支援を得られるような寄附金の使途の充実等の検討を進めるとともに、対象事業のあり方について不断の改善に取り組み、事業内容についてわかりやすく積極的なPRに取り組んでいきたい。

◯笠委員 27年度においては、環境市民ファンドに最も多く寄附が集まっているとのことだが、その要因及び環境局としてどのように活用していくのか尋ねる。

△環境局長 27年度の環境市民ファンドへの寄附については、亡くなった市民の方から緑地化など環境保全のために役立てほしいという遺志で1,800万円を超える遺贈がなされたものである。この寄附金については寄附者の遺志を踏まえ、今年度から環境学習の一環として小学校、中学校の児童生徒が学校や地域にある身近な樹木について学習し、植樹を行うわたしたちの樹プロジェクト事業に活用している。

◯笠委員 亡くなった方から遺贈という形で本市へ寄附がなされるのは、非常にありがたいことである。市民の中には、長年住んだ市へ寄附という形で協力したいと考える人も多くいると思われる。ふるさと納税というネーミングから、どちらかというと市外からの寄附に焦点が集まりがちであるが、遺贈なども含め、市民からの寄附も積極的に受け入れていくことが必要だと思うが、所見を尋ねる。

△財政局長 ふくおか応援寄付については、市民からも多くの寄附がなされている状況であり、今後もさらに各局と連携しながら、市民とともに事業を推進するという観点で、より多くの人から共感や支援してもらえるよう取り組んでいきたい。

◯笠委員 市外に居住している本市の職員には、ふるさと納税を利用し、本市への寄附をお願いしたい。それはその行動が、職員たちが進めている事業の推進に大いに役立つからである。ふるさと納税制度そのものは大変よいが、今は本市から市税が出ていっている厳しい状況にあるため、まずは我々が積極的に対処しなければならないと考える。市民への働きかけももちろん重要であるが、全国に向けて呼びかけ、幅広く賛同、支援してもらうには、今後、新しい発想での取り組みも必要と考える。寄附者の賛同を得る仕組みとしてクラウドファンディングの手法を活用し、ふるさと納税の推進に取り組んでいる団体もあると聞く。クラウドファンディングとは、製品、サービスの開発やプロジェクトの実施など、特定の目的のためにインターネットを通じて不特定多数の人から資金の協力を募る取り組みである。社会的意義の大きいプロジェクトについて、プロジェクトの目的や活動状況を知らせることで、取り組みへの共感に基づく寄附を募るものと聞いている。他の地方公共団体においては、どのような事例でクラウドファンディングの手法を活用し、ふるさと納税の推進に取り組んでいるのか尋ねる。

△財政局長 ほかの地方公共団体では、難病治療の研究支援、犬の殺処分ゼロに向けたプロジェクトなどについて、いわゆるクラウドファンディングの手法により、いつまでに幾ら集めるという形で目標を設定して寄附を募り、多くの人から共感や賛同を得て目標を達成している事例がある。なお、本市においても、直接市が寄附を募ったものではないが、早良区でサザエさん像の再建に向けていわゆるクラウドファンディングの取り組みが実施され、目標額を超える寄附を集めた事例がある。

◯笠委員 ふるさと納税制度は、市民が寄附先を選択し、その使われ方を考えるきっかけになるという点で意義のある制度である。これまで本市でも、ふくおかハウスの建設では多くの賛同を得た実績があるため、幅広く共感してもらえるような事業を打ち出すことなどにより、多くの支援を得られる可能性がある。例えば美術館のリニューアルの目玉として、新たに草間彌生氏に作品を制作してもらい、その購入費についてクラウドファンディングによる寄附を活用するということも考えられる。若い人たちに、特定の政策について協力してくださいと呼びかけをするのは、若くてインターネットに通じ、クラウドファンディングのイメージにぴったりな市長が誰よりもよいと思う。まだ本市では実施していないとのことであるため、ぜひ市長みずからが本格的に取り組み、税収確保に努められたい。ふくおかハウスは成功したのであるから、早く次の目玉を見つけ、取り組んでいくことが非常に肝要である。今後は、先ほど述べたアートプロジェクトのような新たな切り口で事業の開拓やクラウドファンディング等、新たな資金調達方法の活用などの工夫が必要と考えるが、最後に市長の所見を尋ね質問を終わる。

△市長 ふくおか応援寄付の推進に当たっては、ふくおかハウスの整備への寄附のように、多くの人々から応援してもらえるような施策、事業に取り組んでいくということが重要と考えている。私も、ふくおかハウスの建設募金の委員会の委員として、関係各界の皆さんと連携し、ふくおかハウスの募金、整備に対する寄附をお願いする活動をしてきたが、病気と闘う子どもたちとその家族を支えるために、多くの人の善意が寄せられ、ふくおかハウスの整備が実現をしたわけである。本市を応援したいという善意に応えていけるよう、クラウドファンディングも含めさまざまな工夫をしながら検討し、より多くの人から本市の施策や事業に共感や賛同を得られるように、ふくおか応援寄付の推進にもしっかりと取り組んでいきたい。