天野 議員の質問と答弁

◯35番(天野こう)登壇 私は、みらい・無所属の会を代表して、市民利用施設における受益者負担のあり方について、地域の野良猫に係る諸問題について、以上の2点を質問します。
 1つ目の質問として、市民利用施設における受益者負担のあり方についてお尋ねします。
 本市は、157万人を超える多くの市民に対して公共サービスを提供するため、多数の市民利用施設を有しております。市民利用施設と一言で言っても、多種多様な公共サービスを提供しており、そのサービス内容はもちろんのこと、運営方法なども異なっており、各所管局の方針に基づき、市民の利用に提供されてきたものと思います。ただ、全て一くくりにできないにしても、一定の共通する課題は存在するのではないかと考えております。当然のことながら公共施設としてのコストは生じますし、利用される市民とそうでない市民もいます。行政サービスとして、公正、公平に実施されているのか、よくチェックする必要があります。
 そこで今回取り上げるテーマが、受益者負担のあり方についてです。受益者たる市民に対して負担を求める代表的なものに施設使用料がありますが、現在の市民利用施設における使用料は、どこでどのように設定しているのか、まず初めにお尋ねします。
 以上で1問目を終え、2問目以降は自席にて質問をします。
◯財政局長(則松和哉) 市民利用施設の使用料の設定につきましては、地方自治法第228条の規定により条例で定めなければならないとされております。具体的な使用料については、法令等に定めがある場合を除きまして、各施設の所管局において適切な使用料を検討し、議会の議決を経て適用しております。以上でございます。
◯35番(天野こう) 使用料の設定は条例への明記、議会の議決を得る必要があるなど、大変重いプロセスを経て設定されるものです。たとえ受益者という立場であっても、市民に税以外で負担を求めることに関しては慎重にならなければならないという証左とも言えます。ただ、その設定プロセスは各所管局の考えで整理しているという御答弁でありました。その考えとは何を指すのか不明瞭です。この点に関しては、後段でお尋ねしてまいります。
 では、本市の市民利用施設における使用料設定の考え方はどのようなものがあるのでしょうか。
◯財政局長(則松和哉) 市民利用施設の使用料については、施設の使用または利用という受益に対する反対給付として、受益者から応益的に徴収される負担と解釈されております。
 本市におきましても、このような受益者負担の考え方に基づき、施設利用者に利用料を負担いただいているところでございます。以上でございます。
◯35番(天野こう) ありがとうございます。こういった使用料の取り扱いは、受益者負担のあり方を考える上で重要になります。受益者負担のあり方に関しては、過去の包括外部監査においても指摘を受けているようです。
 平成27年度に受けた、受益者負担に関する指摘事項の概要をお示しください。
◯財政局長(則松和哉) 包括外部監査における受益者負担に関する指摘事項の概要でございますが、まず、本市の現状として複数の施設において使用料の具体的根拠、理由が不明確であるほか、多くの施設において定期的な見直しが行われていないなどの課題があるという指摘がございました。
 このような状況を踏まえ、監査報告書では市民利用施設で提供する行政サービスのコストに対して、受益者負担の割合が適切な水準となっているか、利用者と未利用者の公平性が図られているか、少子高齢化の進展等、社会情勢を踏まえた料金設定となっているか、などの受益者負担のあり方についての検討が必要であるとされたところでございます。
 また、検討の進め方として全庁的な受益者負担の見直しを図るため、本市における使用料設定の基本方針を策定の上、各施設における望ましい受益者負担割合を算定し、料金改定の必要性を検討するとともに、使用料の算定根拠を明確にし、市民に十分な周知を図るべきとの意見をいただいております。以上でございます。
◯35番(天野こう) 私は重要な御指摘をいただいているものと考えています。一応、その報告書の原本というか、全て今回持ってきてみたんですけれども、(資料表示)相当なボリュームですし、目を通すだけでも大変であったんですが、各施設の詳細な分析というのを行っておりますので、こういったものをしっかり見ていただいた以上は今後検討に使っていくしかないかなと思っております。
 受益者負担の考え方が、本市においてどこまで公平、公正に反映されているのか、外部監査という外からの視点において不十分といった内容でした。報告書の中では、これまで各所管局ごとに設定してきた使用料に関して根拠が不明であると指摘されるなど、私も現在の使用料設定が客観性に欠けるのではないかと思っております。
 現在、既に多くの市民が利用している施設において、使用料を払っていただいているにもかかわらず、その使用料の設定根拠が不明であるということでは、市民に対する説明責任を果たせていないのではないでしょうか、御所見をお尋ねします。
◯財政局長(則松和哉) 包括外部監査報告書におきましても、市は明確な根拠に基づき使用料を設定していることを市民に対し説明する責任があるとされております。現状は、設定根拠等に課題があるとの指摘をいただいていることから、料金設定根拠をより明確化し、透明性をさらに確保する必要があると考えております。以上でございます。
◯35番(天野こう) 設定根拠の明確化の必要性に対する当局との相互理解は図られていると思います。
 次に、現在の状況についてお尋ねします。現在の市民利用施設の使用料設定において、どのように受益者負担の考えが反映されているのでしょうか。
◯財政局長(則松和哉) これまでも施設の所管局におきまして、サービス提供に係るコストや、他都市または本市の類似施設の使用料の水準などを踏まえ、受益者負担の考え方を反映した使用料の設定や改定が行われてきたところでございます。以上でございます。
◯35番(天野こう) サービス提供に係るコストや類似施設の使用料水準等をもとに設定してきたとのことです。そもそもの類似施設の使用料水準が適正なのか、また、いつごろ設定されたものなのかなど、根拠をたどってみても不明瞭な点は否めません。
 では、なぜ個別施設ごとの使用料設定を実施しているのでしょうか。また、現在の設定方法に課題はないのでしょうか。
◯財政局長(則松和哉) 施設の使用料につきましては、施設の設置目的や提供するサービスの内容に即して設定すべきものであることから、これまでも各施設の所管局において使用料を設定しているところでございます。
 一方で、施設ごとに使用料を設定することによる課題といたしましては、例えば、利用者に負担いただくべきコストの範囲やその算定方法などについて、施設間で相違が生じる可能性があることなどでございます。以上でございます。
◯35番(天野こう) 各施設の特性を反映させることも重要なことと思います。しかしながら、その設定根拠は各所管局の判断であるがゆえに、果たして客観的に説明可能なものとなっているのか、疑問が生じます。それは、おっしゃっていただいた施設ごとの受益者負担に関する考え方のばらつきにもつながる懸念があります。
 監査報告書では、全市統一的な考え方に基づく使用料設定の基本方針を定めるべきとされていますが、その場合の効果と課題をどのようにお考えでしょうか。
◯財政局長(則松和哉) 使用料設定の基本方針を定め、市民利用施設共通の料金設定の考え方を整理することによる効果といたしましては、より適切な使用料の設定を行うことができるようになるとともに、施設を利用する方、利用しない方、いずれにとっても納得性が高まるものと考えております。
 一方、使用料の設定の基本方針を定める場合の課題といたしましては、全ての市民利用施設に適応可能な料金設定の考え方を整理することはきわめて困難であり、一部例外的な取り扱いも必要になるものと考えております。以上でございます。
◯35番(天野こう) 効果と課題の整理は重要です。また、おっしゃっていただいた例外規定の適用など、基本方針を定める困難さも一定理解できます。ただ、市民により御納得いただいて使用料を負担していただく上で、基本となる考え方は大切です。報告書の中では、受益者負担割合に関して監査人独自の試算も行っており、46の市民利用施設が対象となり、その試算に基づいた基準と照らして、現在の施設の受益者負担割合の水準を評価していました。ただ、割合算定上の費用の範囲に減価償却費等のイニシャルコストを含めるかどうかは議論の余地があるとされながらも、本報告書においては、減価償却費を含んで算定しており、その点で、市民に求めるべき受益者負担割合は比較的高くなりがちなのではないかと思っております。しかし、施設の中には現在、本市が市民に求めている受益者負担割合が既に高過ぎると指摘を受けている施設が3施設あり、受益者へ過度な負担をお願いしている懸念もあります。
 包括外部監査の指摘は、必ずその指摘に基づいて制度変更をしなければならないものではありませんが、地方自治法に基づき実施されたものですので、十分な検討が必要となります。また、指摘を受けたのが平成27年度ということもあって、既に2年以上が経過しています。
 そこでお尋ねしますが、監査を受けて、これまでどのような検討を進めてきたのでしょうか。
◯財政局長(則松和哉) 監査意見を踏まえ、市民利用施設における受益者負担のあり方についての検討等を全市的に行うこととしておりまして、現在関係局とともに、施設ごとのコスト分析や入場者などの利用状況を調査するとともに、他団体における受益者負担の見直しの状況の把握などを行っているところでございます。以上でございます。
◯35番(天野こう) 検討しているということでございますが、その検討プロセスは現時点で不明瞭で、財政局として、各所管局とどう協議を行っているのかが見えません。ただ、簡単な検討ではないとも思います。これまで使用料設定をしてきた背景にも配慮しなければなりませんし、各施設所管局との協議はもとより、市民の理解を得やすい丁寧な議論も必要となります。また、他都市においても同様の議論があり、全市統一的な基準を制定している自治体もふえてきているとお聞きします。
 全国の政令市における取り組み状況はどのようになっているのでしょうか。取り組んでいる具体的な都市名をお示しください。
◯財政局長(則松和哉) 20政令指定都市のうち、千葉市、川崎市、横浜市、相模原市、静岡市、浜松市、名古屋市、大阪市、広島市、北九州市の10の都市におきまして、受益者負担の適正化等を目的として、使用料の算定に関する統一的な指針や方針の整備などが行われております。以上でございます。
◯35番(天野こう) およそ半分の政令市において統一的な基準が定められていたり、まだ制定には至っていないにしても検討中の自治体もあるようですので、本市においても、積極的な議論を進めていく必要性を感じます。使用料が高い、また場合によっては安いという議論は、あらゆる市民利用施設において特に現場レベルで生じているものと思います。
 しかし、使用料の設定に当たっては、その前提となる受益者負担の考え方が全市統一的に存在しないことが一番の問題と私は捉えています。監査でも既に指摘を受けている内容ではありますが、受益者負担基準の一つの目安として、施設の特性に応じた類型化という手法があります。施設サービスとして必需的なものなのか、もしくは選択的なものなのか、また、民間提供可能なものとして市場的なものか、もしくは非市場的なものかといったすみ分けの方法です。
 もちろん一概に言えない施設もあることから、おおむねの割合で示すことになりますが、いずれにしましても、既に制定している政令市の実例を見てもほぼ同様の基準を設けていることから、基準設定の方向性として多様な手法があるわけではなく、この点、基準設定に係る検討の論点は比較的明確であると言えます。市民への納得性を高めていくためには、他都市でも取り組まれているように、個々の施設所管局にとどまらない全市的な検討が必要と考えます。また、この問題は将来の市民利用施設の問題ではありません。まさに、今現在利用していただいている施設においてお支払いいただいている使用料の根拠が不明瞭ということであれば、そんな不確かな根拠に基づいて使用料を徴収するのかと、施設利用者の方々からはもちろん、施設を利用されていない市民の方々からもお怒りの声を受けかねません。そういった意味では、今すぐにでも根拠を客観的に明確化しなければならないような状況にあるということを肝に銘じるべきだと思っております。
 全市的に早急な検討が必要だと思いますが、御所見をお尋ねします。
◯財政局長(則松和哉) 議員御指摘のように、現在負担いただいている使用料について、市民に根拠を説明していく必要があると考えております。
 今後におきましても、包括外部監査報告の意見や本日いただいた御指摘を踏まえながら、料金設定の根拠の明確化を図るとともに、引き続き各施設の状況の調査、分析を行い、庁内での調整を図りながら、市民利用施設の受益者負担のあり方について、基本方針の策定の必要性も含め、早急に検討を進めてまいりたいと考えております。以上でございます。
◯35番(天野こう) ぜひともよろしくお願いいたします。今後、受益者負担ルールが明確化された場合、使用料設定の基本方針を策定して、その結果として使用料全体の見直しにもつながることも予想されます。その場合には、直接利用者負担に影響してくる可能性もあります。そのため、決して行政内部だけで検討せずに、広く施設利用者を初めとした市民の意見を聞き、ルールの統一化に対する御理解を得ていく必要性を感じております。私が調べたところによりますと、名古屋市、横浜市、相模原市、北九州市の検討プロセスにおいては、外部の有識者や市民を交えた第三者委員会を設置し、あり方検討に1年から2年の時間を費やしています。スピード感を持って取り組んでいただくと同時に、高齢者や子どもに対する配慮など、市民理解の得やすい丁寧な検討プロセスを踏んでいただくよう要望して、この質問を終わります。
 では次に、地域の野良猫に係る諸問題について質問をします。
 私は昨年の6月議会において、同趣旨の質問をさせていただきましたが、その後の取り組み及び今後の取り組み方針に関しまして、昨年質問をした論点も踏まえながら質問をさせていただきます。
 地域を取り巻く野良猫被害は、行政だけで察知することはなかなか困難です。野良猫を規制する法律がないのはもちろん、人に重大な被害を与えるといったことが一般的に生じにくい点からも、野良猫の存在自体が直ちに悪いといった論調にはなりません。しかしながら、野良猫に対する市民の捉え方はさまざまで、動物愛護の観点から積極的にかわいがる市民がいる一方で、単純に猫自体に嫌悪感を抱く市民がいるのも事実です。その最たる例として、先週の報道にもありましたが、市内各地で野良猫が殺傷、虐待されるなどの痛ましい事件も生じてしまっております。では、その背景には何があるのでしょうか。市民の野良猫に対する考え方や寄せられる情報が重要になりますが、その点の質問を昨年させていただきました。
 29年度に、市民アンケート調査において野良猫に係る問題について質問をしていただいたようでありますが、どのような内容で質問をし、どのような市民の声が拾えたのでしょうか。
◯保健福祉局長(永渕英洋) 猫問題に関するアンケートにつきましては、猫に関する問題の解決に向け、施策検討の基礎資料とするため、市民の皆様の御意見をお聞きしたもので、平成29年9月に実施しております。主な質問と回答につきましては、過去1年間の猫による被害の有無については、受けたことがあるが39.3%、受けていないが60.3%となっておりました。野良猫の頭数をふやさないための繁殖制限の必要性については、必要が79.7%、必要ではないが9.4%、わからないが10.2%となっておりました。
 また、猫の問題を解決するために市が行う施策として有効だと思うことについては、複数回答可としたところ、野良猫への餌やりの規制が54.0%、飼い猫の登録制が45.6%、地域猫活動の推進が35.2%、行政が野良猫の不妊去勢手術を行うが33.4%などとなっております。以上でございます。
◯35番(天野こう) 猫による被害の有無はもちろん、具体的な対策手法に関しても細かく質問を行っていただきました。中でも繁殖制限の必要性を求める市民の割合が8割近くに上るなど、何かしらの対策を市民が求めていることは確かかと思います。もちろん現在、本市がこういった声に対して何もやっていないわけではありません。本市における対策の中心は地域猫活動かと思います。
 現在の地域猫活動の取り組み状況をお尋ねしたいと思います。直近3年間の地域猫活動の新規指定地域数の推移をお示しください。あわせて、これまでの累計件数もお示しください。
◯保健福祉局長(永渕英洋) 地域猫活動の新規指定地域数につきましては、平成27年度は10地域、28年度は3地域、29年度は2地域であり、これまでの延べ指定地域数は75地域となってございます。以上でございます。
◯35番(天野こう) 28年度が3分の1に減っている現状を昨年お聞きしましたが、29年度はさらに1件減って2件になっております。地域猫活動に取り組む必要性が薄れてきているのならまだよいのですが、苦情件数の減少につながっているのでしょうか。苦情件数は、後ほどお尋ねしてまいります。
 また、地域猫活動を新たに行うことも重要ですが、これまで行ってきた地域における効果検証も重要です。昨年度までに指定した地域の現在の活動状況をお尋ねします。
◯保健福祉局長(永渕英洋) 昨年度までに指定した75地域のうち、現在も活動中の地域が41地域、活動を終了した地域が34地域となってございます。以上でございます。
◯35番(天野こう) 単純に活動を行えているのか、また行えていないのかをお示しいただきましたが、活動中の地域であっても順調に行えているところと苦労しているところがあったり、活動を終了した地域であっても、野良猫問題が解決して必要がなくなったところもあれば、担い手不足等の問題からやっていけなくなったところもあるかと思います。地域猫活動は当然のことながら、地域住民が主体となって行っていただく活動ですので、その継続性にはさまざまな困難もつきまとってくることが予想されます。せっかく取り組んでいただいても、途中でそのルールが形骸化してしまっては、もとのもくあみです。また、地域猫活動をより活動しやすく行政として促していくためにも、その効果検証は不可欠です。個別事案の検証は丁寧さが求められますが、今後の検証及びよりよい地域猫活動への発展に向けた取り組みを要望します。
 昨年の質疑では、平成26年度実施の市民意識調査の結果による地域猫活動を知らないとする市民の割合が7割を超えていた点に関しても問題視しました。
 そこで、地域の主要な担い手である自治会等への周知徹底が重要であると指摘させていただきましたが、自治会などへどのような周知を行ってきたのでしょうか。
◯保健福祉局長(永渕英洋) 自治会等に対する周知といたしましては、平成29年度に、各区の自治協議会会長会において地域猫活動の説明を行った上で、地域猫活動の啓発チラシを自治会へ配付し、回覧したところでございます。以上でございます。
◯35番(天野こう) 積極的に取り組んでいただいたものと思っております。新たに作成していただいたチラシは私も拝見させていただきましたが、視覚的にもわかりやすく、工夫をしていただいたのだなと感じます。ちょっと持ってはきたんですけれども、(資料表示)何種類もつくっていただいて、色鮮やかにつくっていますし、くどくどしく説明もなく、イラストも交えながら、わかりやすく工夫をされているなと感じましたので、この点、つくっていただいて周知していただくことには感謝申し上げたいと思います。私も地域を回っていると、地域の掲示板にこのチラシが掲示されていることを見て、地域によってうまく活用していただいているのだなと思いました。
 では、取り組みを強化した結果、自治会からはどのような反応があり、どのような効果があったと考えておられるのでしょうか。
◯保健福祉局長(永渕英洋) 自治会への周知に伴い、地域猫活動を始めたいという相談が寄せられる一方で、地域猫活動そのものに批判的な意見を寄せられたことから、地域には多様な意見があることを改めて認識するとともに、地域猫活動について一定程度の周知は図られたものではないかと考えております。以上でございます。
◯35番(天野こう) 自治会にとって、地域猫活動は問題解決の手段であると同時に、その活動主体が地域となることからも、ある意味では自治会の負担ともなりかねません。その点はおっしゃっていただいたとおり、自治会によって温度差が生じることはいたし方ないと言えます。しかしながら、まずは地域猫活動に限らず、野良猫に関して評価する意見も、また批判的な意見もすくい上げることが必要ではないでしょうか。また、地域住民はさまざまなボランティア活動を行っています。清掃活動など、比較的取り組みやすいものと比べて、地域猫活動は合意形成が難しく、簡単には取り組みにくい難易度の高いボランティア活動とも言えます。地域猫活動は本市に導入されて9年がたち、まだまだ知られていない現状があるにしても、導入期は過ぎているのではないでしょうか。活動の主体は地域だとしても今後はどういった活動のしにくさがあるのかなど、行政的にも地域に、もう一歩歩み寄って、活動の支援を行っていただければと思います。
 地域猫活動の効果検証を図る一つの指標にもなり得るのが、前段でも述べました市民からの苦情件数です。直近3年間の野良猫に関する苦情件数の推移をお尋ねします。
◯保健福祉局長(永渕英洋) 野良猫に関する苦情件数につきましては、平成27年度は267件、28年度は230件、29年度は324件でございます。以上でございます。
◯35番(天野こう) 27年度から28年度に至っては苦情件数が減っているにもかかわらず、29年度の苦情件数は、28年度と比べて100件近く増加してしまっています。これは、27年度までの推移から見ても異常と言っていいのではないかと感じます。
 29年度が急増している要因に何があるとお考えでしょうか。また、苦情の主だった内容もあわせてお示しください。
◯保健福祉局長(永渕英洋) 平成29年度の苦情の主な内容としましては、無責任な餌やり、ふん尿被害、物への被害、ごみを荒らすなどがあります。
 平成29年度の苦情件数が前年度に比べて増加した要因については明確ではございませんが、内訳としましては、無責任な餌やりとふん尿被害が大幅に増加しているところでございます。以上でございます。
◯35番(天野こう) 何か特別な出来事があったわけではなく、これだけ増加していることには注意を払う必要があります。地域猫活動を新規で行う数は減少傾向であるにもかかわらず、これほどの苦情が寄せられているということは残念なことではありますが、少なくとも当該の苦情発生地域においては、地域猫活動が十分な効果を発揮していない、もしくは何らの措置も行われていないのではないでしょうか。この苦情の中身から今後の対策のヒントを得ていく必要性を感じます。野良猫に起因する問題は、果たして全市共通したものなのか、それとも地域固有のものなのか、それをはかる上で一つ指標になるのが、この苦情件数ではないでしょうか。
 29年度の苦情件数を区ごとに分けたら、どういった値が出るのでしょうか。全体の内訳をお示しください。
◯保健福祉局長(永渕英洋) 平成29年度の野良猫に関する区ごとの苦情件数につきましては、東区57件、博多区49件、中央区45件、南区37件、城南区31件、早良区35件、西区70件でございます。以上でございます。
◯35番(天野こう) ありがとうございます。区ごとで見た場合に西区が多い印象は持ちますが、各区それぞれ問題が生じており、特段の傾向はつかめません。
 では、さらに細かく見た場合にはどのような傾向があるのでしょうか。小学校区ごとで見た場合はどうなっているのでしょうか。
◯保健福祉局長(永渕英洋) 平成29年度の野良猫に関する校区ごとの苦情件数につきましては、福岡市内の全小学校区144校区のうち、83校区で苦情が発生しております。
 その内訳といたしましては、苦情件数が4件以下の校区が55校区、5件から9件が24校区、10件以上が4校区となっており、苦情件数の最も多い校区では11件発生しておりました。以上でございます。
◯35番(天野こう) ありがとうございます。大体の傾向が出てきたのではないかと思います。そもそもの苦情が発生していない校区は全体の4割程度あり、全校区に共通した課題ではないようにも、数字上では見てとれます。また、校区ごとの苦情発生件数も1件から4件が多いにしても、10件以上ある校区が4校区あるなど、問題の深刻ぐあいがうかがえます。また、苦情件数はその数以外にも経年での比較も重要かと思います。件数が多くても単年で減っているのか、それとも長年慢性的に苦情が生じ続けているのか、たとえ単年の苦情件数が少なくても、問題が小さいかどうかははかりかねます。
 今回、単年で校区ごとに苦情件数を分類していただきましたが、今後は経年比較を行うなど、苦情の分析をもっと精緻に行っていくべきではないでしょうか、御所見をお尋ねします。
◯保健福祉局長(永渕英洋) 市民の皆様から寄せられる苦情の件数や内容につきましては、事業に係る重要かつ有用な指標の一つであり、御指摘の経年比較を含む傾向分析等に留意しつつ、施策の評価や検討に生かしてまいります。以上でございます。
◯35番(天野こう) ぜひともよろしくお願いいたします。また、野良猫の問題は校区内であっても問題の濃淡があることが予想されることから、校区とは別に苦情が発生している場所を地図上にプロットするなど、問題例の抽出に工夫が必要です。校区ごとの経年比較も行った上で、問題を可視化する意味でも地図分析の手法を用いてみることについても、御提案しておきます。
 私は今回の苦情分析の結果からも、猫問題は全市共通した課題ではなく、地域性のある課題であると考えています。そのため、本市が今後対策を打っていくにしても、全市的に取り組むのではなく、問題が特に深刻な地域を抽出して、集中的かつ抜本的に対策を講じたほうが、効率的、効果的な対策となるのではないでしょうか、御所見をお尋ねします。
◯保健福祉局長(永渕英洋) 猫問題が生じている地域に対し、集中的に対策を講じることは、効率的、効果的であると考えております。一方で、猫問題が生じている地域の選定や効果的な対策の検討に当たり、苦情件数は猫問題をはかる重要な指標の一つではありますが、地域においては、猫問題への対応にはさまざまな御意見があり、また、生じている問題や取り巻く環境もそれぞれ異なっていることから、地域の実情と意向等も踏まえた上で、慎重に検討する必要があると考えてございます。以上でございます。
◯35番(天野こう) 対策の方向性については当局との相互理解は図れていると思います。またおっしゃるとおり、苦情件数だけで一概に対策は図れませんが、自治会などの地域と意見交換をするツールとして、この地域の苦情の実態も活用していただきたいと思います。
 先に述べた、集中的かつ抜本的な対策として有力な方法の一つに、繁殖制限の取り組みがあります。
 繁殖制限活動に関しては神戸市が条例を制定し、先駆的な取り組みを行っていますが、昨年の質疑において本市も調査を行っていく旨の答弁をいただいておりました。その後の調査状況をお尋ねします。
◯保健福祉局長(永渕英洋) 神戸市におきます野良猫の繁殖制限の取り組みにつきましては、平成30年5月に行った聞き取り調査によりますと、神戸市では、平成29年4月に施行された、神戸市人と猫との共生に関する条例に基づき、獣医師会や動物愛護団体、地域団体等から構成される神戸市人と猫との共生推進協議会が地域からの申請を受けて、地域の実情を踏まえ、必要性を判断した上で繁殖制限を実施しております。
 平成29年度の実績としては283カ所の地域で2,051頭の繁殖制限が行われており、神戸市民にはおおむね好意的には受けとめられているようです。また、取り組みの効果判定基準や検証方法等については、現在検討中であるとのことでございます。以上でございます。
◯35番(天野こう) まだ神戸市も取り組みから1年しかたっておらず、効果検証と言えるほどの状況にはないと思いますが、現時点で神戸市民の反応としてはおおむね好意的な意見が多いということです。神戸市の取り組みも、全市的にむやみやたらに繁殖制限を行うのではなくて、苦情件数をもとに対策を行っているようですので、参考に値します。
 取り組み内容もさることながら、その取り組みの進め方にも神戸市は特徴があります。官民の協議体によって施策を検討、実施していく手法は、地域住民や関係諸団体の協力が不可欠な取り組みである以上、大変有意義であり、市民理解も得やすいのではないかと思います。その結果として、神戸市においても、市民からの意見が比較的好意的なのではないかと感じます。
 では、本市においては現在、この野良猫問題に関してどのように民間団体等と連携を図っているのでしょうか。
◯保健福祉局長(永渕英洋) 猫問題に関する民間団体等との連携につきましては、学識経験者や獣医師会、動物愛護団体等で構成される福岡市動物の愛護と管理推進協議会において、猫問題を含む動物愛護管理行政に関する御意見を頂戴し、施策への反映や推進を図っているところでございます。以上でございます。
◯35番(天野こう) 本市でもそういった協議会が存在するのであれば、神戸市のような取り組みもしやすいと思います。
 これまで述べてきた苦情の徹底した分析に基づいた繁殖制限などを、神戸市の検討プロセスも参考にしながら、本市においても積極的に検討していただけないでしょうか、御所見をお尋ねします。
◯保健福祉局長(永渕英洋) 地域の野良猫にかかわる諸問題への対策につきましては、苦情の件数や内容の分析を初め、地域の実情や意向も踏まえ、福岡市動物の愛護と管理推進協議会の御意見を伺いながら、解決に向けた効果的な対策を検討してまいります。以上でございます。
◯35番(天野こう) ぜひともよろしくお願いいたします。最後に、市長にお尋ねしたいと思います。そもそもの話をしますと、野良猫問題は人の都合で社会的に生じたものです。見方を変えれば猫も被害者と言えます。その視点に立てば、当然殺処分はなくしていかなければなりませんが、同時に、地域の野良猫との共生も真剣に考えていかないと、人にとっても猫にとっても不幸です。現在の野良猫との共生に向けた取り組みである地域猫活動は、これまで述べてきたとおり新規指定地域数が減少する一方で苦情の件数は急増しています。
 本市は、今年度新たに犬猫パートナーシップ店制度を始めました。飼い主に対して適正飼育を促し、不幸な野良猫をなるべくふやさないようにする取り組みには賛同いたしますが、現在生じている苦情の多くが、今現在、地域を闊歩している野良猫に起因しております。市民のそういった声に応えるためにも、また先般の野良猫に対する虐待事案への対策の意味でも、ぜひこの野良猫問題にも積極的に取り組んでいただきたいと考えますが、市長の御所見をお尋ねして私の質問を終わります。
◯市長(高島宗一郎) 高齢化や核家族化が進んでいく中、史上初めて猫の飼育頭数が犬を超えるなど、猫ブームの到来とも言われ、猫への関心が非常に高まっています。一方では、猫の虐待ですとか、また野良猫による被害など、猫にかかわる問題も生じておりまして、福岡市においても、人と猫との共生に関する施策の重要性が高まっているというふうに認識をしております。共生に向けては、まずは適正飼育や終生飼育を進めることが第一と考えておりまして、犬猫パートナーシップ店制度の普及ですとか猫のマイクロチップの装着、また、不妊去勢手術の推進に取り組みますとともに、地域の野良猫問題の解決に向け、地域住民と野良猫との共生を図る活動でもあります地域猫活動の支援等の取り組みを積極的に推進をしてまいります。
 今後とも、人と動物との調和のとれた共生社会の実現を目指して、そして犬猫の殺処分のゼロ、これを目指して、地域、動物関係団体、市民ボランティアの皆様とも連携をして、動物愛護と適正飼育の普及啓発にしっかりと取り組んでまいります。以上です。





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